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「結果がすべて」の営業ほど伸び悩む...企業の思考停止を招く古い慣習

山田和裕(株式会社フリクレア代表取締役)

2023年03月15日 公開

 

結果を出すためのプロセスを見える化する

「結果がすべて」 ――― 営業でよく聞く使い古された言葉です。しかし、これはハッキリ言って"誤った営業の常識"です。古い営業管理の虚構によって刷り込まれた"科学的な根拠のない言い伝え"にすぎないのです。

本当は、営業は「プロセスがすべて」なのです。新しい常識は、「結果を出すためのプロセスを明らかにして、それがちゃんとできているかを見える化していくこと」です。

山田和裕
<『1000人のトップセールスをデータ分析してわかった 営業の正解』P.256より>

上の図は「見える結果」と「見えないプロセス」の因果関係を氷山に例えたものです。「氷山モデル」と言います。

「受注」や「売上」などは、数字でわかりやすいので誰にでも見えます。氷山でいうと水面上に出ている部分です。

一方、その結果を出すために必要な「ヒアリング」や「提案」などのプロセスは、普通はあまり数値化されていないので見えにくくなっています。

しかし、この水面下の部分には、目に見える水面上の何倍もの氷、すなわち、"結果を出すためにやらなければならないプロセス"が隠れているのです。

 

結果は「正しいプロセス」の延長線上にしかない

少し考えれば子供でもわかると思いますが、やるべきことをやらずに、結果が出るはずがありません。

常に結果を出し続けている「できる営業」は、結果にしか興味がない人には見えなくても、氷山の水面下にある「やるべきこと = 営業の正解につながるプロセス」を淡々とやっているのです。その隠れた事実に目を向けなければ、更なる飛躍は望めません。

だから「営業はプロセスがすべて」なのです。ただ、言うだけで全員できれば苦労はありません。システムで見える化して、ちゃんとできているかどうかを確認する。

できていなければ正す。こういった地道なことが、継続的な業績アップのためには大切になってくるわけです。

今の営業は、「SFA/CRMなどの営業支援システムをうまく活用して、プロセスを見えるようにし、どうやって業績アップを図るかを科学的に考える」という、次のステージに入っています。

「結果かプロセスか」という二項対立のような話ではなく、このような例えで説明すれば、だいたいの方には理解してもらえるようです。

「営業の結果は"正しいプロセス"の延長線上にしかない」ということを。

 

今の営業は「チーム営業」

これまでは「結果がすべて」という誤った常識がまかり通ってきましたが、いくら結果の数字だけを詰めても何も改善しません。いつまでも精神論・根性論では進歩がありません。

IT技術が進歩した今ですら、営業分野の科学的な分析はあまり進んでいないのが悲しい現実です。精神論・根性論の権化であったスポーツも、今はかなり科学的になっています。旧態依然とした今の営業スタイルはすでに行き詰まっているのです。

現実の営業の世界では、SFA /CRM(営業支援システム)の入力すらまだ徹底できていません。入力されていても使えないゴミデータも多いので、分析の精度も低いのです。

また、データを集めようにも、外部の顧客とのやり取りは、社外秘の内容が多いので、普通は録画や録音もできません。対戦記録がちゃんと残されているチェス・囲碁・将棋とは違うのです。

今の営業はチーム営業です。個人力ではなく組織力です。周りのメンバーたちが底上げできれば、あなたの仕事も楽になります。すると、本来やるべきことに集中できるはずです。お互い切磋琢磨できるポジティブなムードが育まれます。

ぜひ、「見えないプロセス」も見える化して明らかにし、チームで意識を共有して業績アップにつなげましょう。

【山田 和裕 (やまだ かずひろ)】
株式会社フリクレア代表取締役。プロセスコンサルティングの第一人者。
総合商社丸紅での船舶ファイナンスからIT業界へ転身。「プロセス見える化」と「プロセス評価」を連携させた"プロセス主義(R)"を提唱。特に営業の見える化を得意とし、業種・業界にとらわれず、100社以上の大手・中堅企業のプロセス改善・営業強化に貢献。

1000人以上のトップセールスに行ったヒアリングと分析をもとに、「できる社員」の勝ちパターン = 成功特性を標準化して「見える化ツール」にまとめる独自の"3次元プロセス分析法(R)"を開発。著書に『1000人のトップセールスをデータ分析してわかった 営業の正解』(かんき出版)などがある。 

 

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