【伊藤裕×やくみつる】からだを知る、感謝する、人生が変わる。
2012年07月18日 公開 2022年11月16日 更新
最高のミトコンドリアを持つ生物は?
【先生】やくさん、最も性能のよいミトコンドリアを持っている生物ってなんやと思います?
【やく】性能がいい? ウーム?
【先生】鳥ですわ。鳥の細胞のミトコンドリアは性能がよいから疲れにくいんです。空を飛ぶって大変な運動量で、ものすごく筋肉を使うことです。すぐ疲れてしまったら空を飛んでられへん。
【やく】渡りもしますしね。海越え山越え。
【先生】そうかといって、鳥に先ほど述べた活性酸素を消すSODという酵素が多いかというと、意外なことにそれは少ないんです。鳥は、もともとミトコンドリアの性能がいいんですわ。
【やく】私は烏になりたい(笑)。
【先生】私、最近、鳥を見るとほれぼれするんです。なんであんなに元気なんやろうと。それに、意外と知られてへんことですが、鳥ってすごい寿命が長いんです。
【やく】これは初耳です。
【先生】ネズミのように小さくてちょこちょこ動く動物のミトコンドリアでは、たくさんエネルギーを作るために活性酸素もたくさんできてしまうんです。エンジンをフル回転させるために、排気ガスもたくさん出るのに似ています。そやからネズミなど小動物の寿命は2、3年ですわ。
一方、鳥のミトコンドリアは、排気量が大きくても、排気ガス(活性酸素)を極力出さへん高性能のものなんです。それで活性酸素の毒にさらされることが少ないから長生きするんです。
【やく】私も高性能のミトコンドリアを持ちたい(笑)。
【先生】エネルギー効率のよい高性能のミトコンドリアを多くするには、運動をすることがおすすめです。それには、ちょいきつめの運動がいいんですね。
ミトコンドリアにとって酸素がちょっと足らへんよ、という状態にしてあげると、ミトコンドリアは、これは自分たちがもっと頑張らなあかんと努力をするんです。それがミトコンドリアを鍛えることになり、性能が高まることにつながります。
ただ、トレードオフ(功罪相半ば)の話やないですけど、きつい運動をした場合は、逆に活性酸素がたくさんできてしまいます。ですから、その度合いが大切なんです。
早歩きを例にとると、ちょい息が弾んで、しかし、隣の人と会話ができるぐらいの状態を20分くらい続ける、というのが目安になるでしょう。そんな運動の機会をよく持つようにすればいいんです。
健康で長生きできる「三大兆候」
【やく】じっとしているばかりでは、いけないんですね。反省します。
【先生】運動がよい点はまだあります。運動をすると活性酸素も多く出ますが、それに連動して、活性酸素を消す酵素もたくさんできるんです。このことは善玉の酵素の貯金をしておくことにつながります。
たとえば、心筋梗塞や脳卒中を起こしたときは活性酸素もバーツと急増しますが、そんな非常事態のときに、活性酸素をやっつける酵素の貯金があれば、それを使って大事に至ることを食い止めることにもなるんです。
【やく】鳥が長生きするのは性能のよいミトコンドリアを持っているから、というお話でしたが、我々人間が長生きできるかどうか、わかりやすい目安となるものがありますか?
【先生】私は「健康で長生きできる3大兆候」と言っています。(1)艶がよくてスベスベした肌をしている、(2)(心臓の病気などがなくて)脈拍が一分間に50~60台とゆっくりである、(3)善玉コレステロール(HDL)が多い、という3つの条件を満たす患者さんには「絶対長生きしますから」と太鼓判を押すんです。
【やく】それに当てはまらない、と言って落ち込む人がいるかもしれません(笑)。
【先生】いつから始めても間に合いますから、思い立ったら吉日で、3大兆候をめざして生活習慣を変えていけばいいのです。それに役立つ禁煙と運動については話しましたが、善玉コレステロールを多くするには、運動をよくすることと適量のお酒がいいんです。
【やく】酒は百薬の長って、ほんとなんだ。
【先生】適量の、ですけどね。