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生き方

生物学者が説く「現代人が孤独に恐怖する」原因

池田清彦(生物学者)

2023年11月28日 公開 2024年12月16日 更新

 

自然と対話したり本を読んだりする

自然の景色や、そこにいる虫や動物、鳥などを眺めているだけで心がゆったりするのは、自然との間に対話が生まれているからです。人づきあいにちょっと疲れてしまったという場合も、そうやって自然の中に身を置けば、ひとりでいても孤独を感じはしないでしょう。

また、読書というのは、情報が次から次へと流れ込み情報をただ受け取るだけのテレビと違って、情景を思い浮かべたり、感触を想像したり、自分のペースでいろいろなことを考えられるという要素があります。これは、「書いた人(作者)との対話」でもあるので、脳内ではコミュニケーションができているのです。

寂しいからいつもテレビをつけているという人もいるようですが、ひとりで過ごす時間は、静かに読書をしたり、自然の中に身をおいて過ごしたりするほうが、孤独を感じずに楽しめると思いますよ。

 

自分の「楽しい」を大事にしよう

孤独という感情に人が苦しむのは、集団(社会)の役に立つこと、周りに認められることにこそ価値がある、という思い込みがあることも要因として考えられます。

たとえば「今の自分は会社の役に立っていない」と考えるようになると、会社にいる間、ずっと孤独を感じることになります。また、「社会の役に立っていない」という考えが、「この世には自分の居場所がない」などという極端な発想につながる危険さえあるのです。

ですから、孤独で苦しいという人は、「誰かの役に立とう」「多くの人に認められたい」なんて大それた考えを、さっさと捨ててしまったほうがいいと思います。

こういう話をすると、何の、誰の役にも立たないなんて生きている意味がないじゃないか! などと怒る人もいるのですが、生物学者の私に言わせれば、そもそも生きることに意味なんてありません。この世に生を受けたから生きているだけであって、それ以上でも以下でもないのです。

「生きる意味=自分の価値」という呪縛から自分を解放し、自分がやりたい、楽しいと思うことをできるだけ優先して積み重ねていく。そうすることが、根本的な孤独対策になると私は思いますよ。

 

【池田清彦(いけだ・きよひこ)】
理学博士。東京教育大学理学部生物学科卒業、東京都立大学大学院理学研究科博士課程生物学専攻単位取得満期退学。山梨大学名誉教授。早稲田大学名誉教授。TAKAO 599 MUSEUM名誉館長。趣味は昆虫採集。著書に『病院に行かない生き方』(PHP新書)、『孤独という病』(宝島社新書)など著書多数。

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