一緒にいるのに寂しいのはなぜ? お坊さんYouTuberが説く「孤独との付き合い方」
2022年05月11日 公開 2022年06月06日 更新
「誰かといるのに孤独を感じる」「先々ひとりになってしまうのが怖い」など、「孤独」というテーマの中にも、さまざまなお悩みがあります。新しい環境で孤独を感じる人も多く、孤独に対する不安な感情は、いつまでも人についてまわるものかもしれません。そんな不安な気持ちとどう向き合えばよいのか、大愚和尚にお答えいただきました。
※本稿は、『PHPスペシャル』2021年12月号より抜粋・編集したものです。
「孤独」は大きな力にもなる
孤独というと、一般的にはネガティブなイメージを持たれがちですが、仏教ではむしろ積極的に孤独をすすめており、お釈迦様はとくに弟子(修行者)に向けて、「犀の角のごとく、ただ独り歩め」という言葉を残されています。
犀とは動物のサイのことで、一つしかないサイの角のように、他者に惑わされることなく自己の目的に向かって歩むことが大切である、という教えです。元々は修行者に向けた言葉ではありますが、孤独を恐れるあまり人の顔色をうかがいすぎたり、他人の言動に振り回されて自分を見失ったりしがちな現代人にも、大きな力になってくれるのではないでしょうか。
ただ、そうは言っても孤独はさみしい。それは当然のことです。大型動物が闊歩しているサバンナで生きていた人間の祖先は、自分ひとりでは食べ物を得られず、身の安全も守れないので、群れを作って生きていました。つまり、仲間はずれ=死で、孤独に対しては本能的に恐怖を感じるように脳ができているのです。
お釈迦様も、「孤独であれ」とおっしゃる一方で、私たちは自分ひとりでは決して生きられないのだとも説かれています。人間の「間」の文字が表すように、私たちは誰かとの関係の中でしか生きていけないのだと。
ひとりになることは必要だが、ひとりでは生きていけない。このお釈迦様の二つの教えを前提にして、孤独とうまくつき合っていくにはどうすればよいのか、みなさんから寄せられたお悩みにお答えしましょう。
「誰かと一緒にいても孤独...」その訳は?
<お悩み1>家族や友だちのグループなど、誰かと一緒にいるのにさみしさを感じます。
私たちは孤独を避けるために、家族なり友だちなりのグループを作るわけですが、その中でたったひとりでも密度の濃い関係を結べる相手がいれば、さみしさを感じないはずです。さみしさにさいなまれるのは、今、家族や友だちと深い関係を築けていないからかもしれません。
孤独を恐れるあまり「とりあえず一緒にいる」関係になっていませんか?自分から心を通わせる努力を怠っていないでしょうか。素敵だな、いい人だな、一緒にいたいな...そう思って夫婦になったり、友だちづき合いを始めたはずです。
そうした初心に立ち返るきっかけとして、結婚記念日や誕生日などの記念日を活用してはどうでしょう。出会ったときのこと、そして今日までのあれこれを振り返りながらゆっくり話をしましょう。すると、自分がいかに相手に生かされているかに気づきます。その思いを相手に伝えましょう。手紙を書くのでもいい。必ず、相手との関係が変わります。