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医師が考える「悔いがない最期」を迎える人の60代からの心がけ

和田秀樹(精神科医)

2023年12月07日 公開

 

お金持ちより幸せなのは「思い出持ち」

お金を使うとは、「思い出をつくる」ことでもあります。人生がいよいよ終わりに近づいている方と接していると、しばしば、こんな切実な声を聞きます。

「死ぬまでに、楽しい思い出をもっと残しておけばよかった」

世を去られたあとに、ご遺族から「『ケチケチせずに使えばよかった』と悔やんでいました」と聞くこともあります。

体が動かなくなったあと、ベッドに横たわりながら強い後悔に駆られる。これはあまり知られていない、老いの現実の一つです。「元気なうちに、やりたいことをやっておけばよかった」という思いは、私たちが想像する以上に痛切なものでしょう。

逆に言うと、やりたいことをやっておくと、体のままならなくなった時期の、心の支えができます。「あのとき、楽しかったな」という数々の思い出です。患者さんも、幸せに旅立っていかれる人は総じて、亡くなられる直前まで、素敵な思い出の話を楽しげに語られます。死ぬ前の最大の財産は、お金ではなく、思い出なのです。

今のうちから「思い出貯蓄」を始めましょう。それが、60代からの幸福な生き方です。

 

自分専用の「やりたいことリスト」を作る

60歳から死ぬまでの期間を、「消化試合」のようにとらえるのは間違いです。さまざまな責任を果たし終え、ここからはもう、どう生きるも自由。お金も、自分の好きなこと、したいことに使いましょう。

私の好きな映画に、『最高の人生の見つけ方』という作品があります。ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマン扮する、余命宣告を受けた二人の老人が、死ぬまでにしたいことを一つひとつ実践していくお話です。同作品の原題はThe Bucket List。「死ぬまでにやりたいことリスト」です。

みなさんも、「やりたいことリスト」を書いてみてはいかがでしょうか。

お金の使い方に「正解」はありません。みなさんの「したいこと」は百人百様、それぞれ違うからです。

行きたいところ、食べたいもの、会いに行きたい人、経験したことのない趣味、買ってみたい車、着てみたい服、試してみたい美容法、興味のある分野の勉強......。何でもいいので、関心事を書き出していきましょう。

すると、おのずから、自分専用の、最適な使い道がわかってきます。あとは、それを実践するだけです。

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著者紹介

和田秀樹(わだ・ひでき)

精神科医

1960年、大阪市生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カールメニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、立命館大学生命科学部特任教授、川崎幸病院精神科顧問、一橋大学経済学部非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック(アンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化したクリニック)院長。著書に、『医学部にとにかく受かるための「要領」がわかる本』(PHP研究所)、『老いの品格』『頭がいい人、悪い人の健康法』(以上、PHP新書)、『50歳からの「脳のトリセツ」』(PHPビジネス新書)、『感情的にならない本』『[新版]「がまん」するから老化する』(以上、PHP文庫)、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『自分は自分 人は人』(知的生きかた文庫)など多数。

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