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養老孟司×畠山重篤「山と川に手を入れれば、“漁業”は復活する」

2012年09月03日 公開

養老孟司 (解剖学者)

漁師が森に木を植える

【畠山】私も、その専門家たちに頼ることができず、木を植えることが海にとってなぜいいのか、科学的にわからないまま活動を始めました。

私たちが植林運動を始めたのは1989年からです。気仙沼湾に森の養分を運んでくる大川の上流にある室根山で、落葉広葉樹を植え始めました。

山の人が木を植えてもニュースにはならないだろうけど、海の人が山に入って木を植えたら、それも商売にならないナラやブナを植えたら、ニュースになるかもしれないし、そうすれば世の中の人が関心をもってくれるのではないかという不純な動機で始めたことなんです。

幸い、気仙沼の歌人、熊谷龍子さんの短歌から生まれた「森は海の恋人」という合い言葉がよかったこともあって、この運動はマスコミで取り上げられました。世の中の多くの人も関心をもってくれました。

日本の国土は、真ん中に山脈があって、日本海側と太平洋側に、二級河川を含めると計3万5000本の川が流れています。ですから、人が暮らしている場所の事情はだいたいどこも同じであり、私たちの活動は普遍性を備えているという感触は得ていました。

ただ、森と川と海がどうつながっているかという科学的な裏づけがないと、行政に対する力にはなりません。

その頃、世間では長良川河口堰の問題が注目されていました。著名人や市民が盛んに反対運動を展開し、話題になっていました。しかし、実際に現場に行って運動の様子を見て、これは負けると私は思いました。

長良川河口堰の反対運動は、河口堰をつくると、サツキマスが遡上できなくなるという主張を繰り返していました。これでは勝てないんです。長良川の河川水が伊勢湾の生物生産とどうかかわっているのかというデータを提示すべきだったんです。

もしそういうデータがあれば、行政は河口堰を建設するに当たって、漁業関係者への膨大な補償を検討しなくてほならなくなります。

しかも、同じことは日本中の河川で起きる可能性があるわけですから、行政は慎重にならざるをえなかったでしょう。しかし、残念ながら、そういった動きはなかったため、長良川河口堰の建設は強行されました。

 

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