「三日坊主」でも気にしない…努力が“続く”心理学
2012年10月04日 公開 2023年01月05日 更新
意気込んで何かを始めてもすぐに辞めてしまう、いわゆる「三日坊主」は身近なところでよく抱える悩みである。
心理学者の内藤誼人氏は、たとえ3日で辞めてしまっても、数日経って再開することが“続ける”ということの第一歩なのだと語る。また、続ける際に大切なのが自分を褒めたり、お金をモチベーションとすることだと言うが、実際にどのような効果が期待できるのだろうか。
※本稿は、内藤誼人 著『努力が報われる人の心理学』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
三日坊主を何度もくり返せ
何をするにしても、すぐに諦めてしまうことを「三日坊主」と言う。
しかし、心理学者の多湖輝さんは『まず動く』(高木書房)という本の中で、三日坊主でも全然かまわないというアドバイスをしている。三日坊主だろうが何だろうが、とにかくチャレンジしてみること自体は、とてもいいことだというのである。
しかも多湖輝さんは、「三日坊主でも、それを30回つづければ、3カ月もつづいたことになる」とも述べている。
たとえば、ペン字の練習帳を買ってきて、3日だけやって、やめてしまったとする。たった3日間で投げ出すわけだから、あまりホメられたことではない。
しかし、1週間後であろうが、1カ月後であろうが、「もう1回やってみようかな?」という気分になってくることがある。そのときに再開すればいいわけだ。
そうやって、三日坊主を何回もくり返せば、結果としては、努力を継続しつづけていることになる。そして、それでいい、と多湖輝さんは述べておられるわけである。
私は、心理学という学問が大好きだから、心理学の論文や書籍をよく読む。しかし、いくら好きだとは言っても、朝から晩まで資料を読んでいたら、うんざりしてくる。だから気分転換をかねて別のジャンルの本も読むし、まるまる1カ月くらい、心理学から離れてしまうことも少なくない。
そうはいっても、やはり自分が一番好きなのは心理学なのであって、そのうちにまた心理学の研究に戻ってくる。私は、こうやってすでに15年以上も心理学という学問と付き合っている。
何をするにしても、最初はやる気があったのに、そのうちにやる気が失われることがある。それはそれで当然のことだから、投げ出すことが一概に悪いとは言えない。
しかし、投げ出しても、またそこに「戻ってくる」ということが重要なのであって、それさえ忘れなければ三日坊主でもかまわないわけである。
本当にダメなのは、いったん投げ出して、そのまま「投げ出しっぱなし」にすることである。完全に努力をやめてしまうのがダメなのであって、どれほど期間が空いても、また戻ってくれば全然問題はないのである。
それを何度もくり返せば、それはもう、三日坊主ではなくて、立派な努力の継続になるのだ。
禁煙をしようとするとき、1日でも2日でも、タバコを我慢できれば、それはそれで意味がある。たとえ3日間しか我慢できなかったのだとしても、禁煙したこと自体は事実なのだから、別に「俺って、意志が弱いなぁ」などと落ち込む必要もない。
3日間の禁煙を、ちょこちょことできるのなら、それはそれで誇ってもいいことなのではないかと私は思っている。
自分で自分をホメまくれ
自分の努力を他人にホメてもらうことは、やる気を高める。
とはいっても、努力しているときに、そんなに都合良く他人が見ているとはかぎらないし、ホメてもらえるともかぎらない。それにまた、他人にホメてもらうのは照れくさいという人もいるかもしれない。
そんなときには、他人に頼らず、自分で自分のことをホメてしまえばいい。
「すごいじゃん、俺って、どこまでも頑張れるんだね」
「私には限界なんてないわ、いくらでも頑張れるんだもん」
「こんなに努力できる俺って、世界一カッコいい」
こんな言葉を、自分自身に向かってどんどんかけるのである。
「なんだか、子どもだましみたいな方法だな……」
と鼻で笑うひとがいるかもしれないが、自分で自分をホメるというのは、意外に効果的であることが知られている。決して、うさんくさい方法ではないので、どうぞ安心して実践してもらいたい。
ミシガン州立大学の J・ブロフィ博士は、自分で自分をホメることのできる習慣を持った子どもほど、頑張り屋さんで、努力家の大人に成長していくと指摘している。
他人の手を借りず、自分で自分をホメられるようになれば、いつでも、どんなときでも、自分をホメることができ、そのたびにやる気を出すことが可能になる。わざわざ他人に携帯で電話をかけ、「頑張っている俺をホメてくれ」などと頼まなくてすむのだ。
仕事をしているときには、1時間おきくらいに自分に話しかけるとよい。
「よおし、今日もいいペースだ。このペースで頑張れよ!」といったセリフを、自分自身に向かってかけてあげるのである。そうすれば集中力を切らさずに仕事をすることができるだろう。
自分の中にもう1人、ウラの自分がいて、そのウラの自分が、オモテの自分に話しかけるようなイメージを持つとよい。
そういうイメージがうまくできないなら、自分の大好きな人や、大好きな芸能人のことをイメージしてもいいだろう。
大好きな歌手や女優さんが、あなたに向かって、「ファイト! 頑張って!」と励ましているような場面をイメージすれば(妄想とも言うが)、どんなに調子が悪いときでも、すぐに絶好調になれるのではないだろうか。
ただし、自分自身に向かって話しかけるときに、ブツブツ……と声に出してやっていると、周囲の人たちに心配されてしまうかもしれない。だから自分で自分をホメるときには、頭の中だけでやること。うっかり声など出してしまうと、ほぼ間違いなく「ヘンなヤツ」のレッテルを貼られてしまうので注意しよう。