「パフォーマンスの低いチーム」を軌道修正するために、部下にすべき質問
2025年05月12日 公開

パフォーマンスが伸び悩むチームを立て直すには、何から着手すべきでしょうか? GoogleでYouTubeやGmailなどを急成長させ、オンライン決済のStripeでCOOを務めたクレア・ヒューズ・ジョンソン氏による書籍『スケーリング・ピープル』より解説します。
※本稿は、クレア・ヒューズ・ジョンソン著, 二木夢子(翻訳)『スケーリング・ピープル 人に寄り添い、チームを強くするマネジメント戦略』(日経BP)を一部抜粋・編集したものです。
パフォーマンスの低いチーム
リモートか対面かを問わず、チームの強化にあらゆる手を打ってもまだ生産性が上がらない場合がある。チームが適切なケイデンスでゴールや指標を検討していれば、問題が手に負えなくなる前に何かがおかしいことに気づき、うまくいけば根本的な問題を解決できるはずだ。
しかし、チームが何週間にもわたって指標やマイルストーンを達成できないことがある。常に合理的な説明があるものの、説明の裏にもっと根深い問題が隠れているのではないかという疑いが頭から離れない。
どのように軌道修正すべきか。まず、次のような手段から取りかかってみてほしい。
深掘りの質問で根本原因を調査する
実績が悪い理由について、あなたはおそらく何らかの仮説を抱いているだろう。関係のあるチームメンバーとの1on1ミーティングで仮説をテストし、どのような事実が出るかを確かめよう。
たとえば、データのアーキテクチャに関する業務に多くの依存関係があるように見受けられたとする。チームメンバーに確認して実際にその通りだと判明したら、なぜ依存関係が多いのか、あるいはチームがボトルネックを防止するための能力やリソースを欠いているのではないか、といった点を掘り下げる。問題を起こしている個人ではなく、常にスケジュールから遅れている、あるいは脱線している一連の業務について確認すべきだ。
チームミーティングで問題に関する自由な対話の機会を設ける
好奇心を持ってアプローチし、非難にならないようにしよう。チームに以下の質問をする。
・ゴールに遅れているのはなぜか:ゴールそのものが間違っている可能性も視野に入れる必要があるが、甘やかしは禁物だ
・その原因は手に負えるか負えないか:チームが思っているよりもなんとかなる場合が多いので、その点を強調しよう
・業務を軌道に戻すために、今何ができるか:アイデアを文書化し、フォローアップと軌道修正の責任を負う担当者を明確にしよう
・本当にコントロールできない原因の場合、業務の進行にどのくらいの影響を与えるか。そうした外部要因をコントロールするためにできることは何か:チームではあらゆる角度からの対応を検討していないかもしれない。たとえば、重要な仕事をやり遂げるために別チームの助けを得ることも考えられる
ゴールが間違っているのが問題である場合、次のステップは比較的簡単だ。
・新しい情報を得た結果としてゴールを修正する必要があることに、チームと合意する
・チームと利害関係者の協力を得て、元のゴールと、ゴールを変えた経緯とその理由を確実にはっきりと文書化する。この作業は信頼性の維持に不可欠だ
・ゴールの再設定とその理由について、社内で透明性を保つ。今回の件で得た教訓と、今後やり方を変える点については特に明確化しよう
チームのスキルセットやチームメンバー間の協力に問題がある場合、根本原因の仮説を引き続き立て、真の原因を発見したという信頼を築いてもらえるようなデータを探そう。
ふたり以上の協力に関する問題なら、個々のメンバーとミーティングをする。最初は別々に、その後で一緒に話を聞くのが望ましい。ワークスタイルとプロセスについて、各メンバーが客観的なフィードバックを共有してくれるような対話を促進し、全員が一丸となって前進するための効果的な道を見つけよう。
意識して中立の立場をとり、チームの利益のために個人が姿勢を変えなければならないことを強調しよう。プラスの変化が見られなければ、ひとりまたは両方を別のチームに異動させることを検討すべきだ。
さらに、協力スキルが劣るなど実際にパフォーマンスの問題を抱えている人がいないかも考える必要がある。
時には、ごく一部のメンバーの問題だと思って調べてみると、実際にはグループのさまざまな要素によってチーム環境が手に負えないほど悪化していたと判明する場合がある。これを無視してはならない。緊急で立ち向かおう。
チームメンバーとの面談を自ら実施するか、人事部門のような中立的な第三者に依頼する。360度レビュー・プロセスに似ているが、チームを対象とした面談だ。依頼した場合は、まとめを書いてもらおう。それからチームについて議論し、マイナスのトレンドと傾向に対応するための重大なセッションを持つ。それぞれのメンバーが改善点に明確にコミットするように図ろう。
摩擦の要素は、相互の自己認識の欠落から来ている。性格とワークスタイルのアセスメントに立ち戻り、チームメンバーに互いの人となり、そして価値観を知ってもらうための時間を取ろう。一緒に業務に携わっているときに使う共通の語彙をチームに伝え、チームのダイナミクスがあなた、そして会社の成功のために重要なのだと明確にしよう。
わたしの経験上、ゴールに到達できない原因は、他のチームとのひとつまたは複数の依存関係であることが多い。チームと会社が成長期にある場合は、特にこの傾向が強い。あなたのチームがプロジェクトのひとつの側面をコントロールしていても、もう半分には別のチームが必要かもしれない。すべてがコントロール下にあれば仕事もずっと楽だが、現実的にはそのようにはいかない。
依存関係を予測し、他のチームと交渉し、問題が発生したら対応し、必要に応じて他チームのリーダーにもエスカレーションするのが、マネジャーとしてのあなたの役割だ。わたしはよく、マネジャーとしての仕事を、チームの行く手を阻む障害物を取り除くことだと考えている。チームの歩みを遅くしているあらゆるものが、わたしの担当だ(※1)。
※1: ハーバード・ビジネススクールのフランシス・フライ教授が、成長のマインドセットを培う著書『マインドセット「やればできる!」の研究』(草思社、2016年)で知られるキャロル・S・ドゥエック氏の観察の要約を教えてくれた。それは次のようなものだった。
「子育てには2種類あり、正しいのはひとつ。子供に道を準備するか、道を進めるように子供を育てるかだ」(答えは「道を進めるように子供を育てる」だった)。マネジャーとして、わたしは両方の側面に気を配るべきだと思う。チームに道を準備するのがマネジャーの役割となる場合もあるが、なによりも、道を進めるようにチームを育てなければならない。