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多忙を極めた先輩が「自分が休んでも、仕事は問題なく回っていた」と語っていたことに、自分も安心できた話

望月大作

2025年05月12日 公開 2025年05月12日 更新

多忙を極めた先輩が「自分が休んでも、仕事は問題なく回っていた」と語っていたことに、自分も安心できた話

世の中にはたくさんの名言や迷言、奇跡のような出来事が存在します。でもそれだけではありません。誰かの何かのきっかけになる言葉だったり行動は十人十色存在していて、それは飾らない何気ない言葉や行動だったりもします。誰がどんな言葉や出来事できっかけをもらったのか、些細なことから大きな出来事までさまざまな分野で活躍されている皆さんに伺いたいと考え、実際に伺ってきました。

第6回としてお話を伺ったのは、クリエイティブ・ディレクターとしてパラリンピックの開会式だったり、最近では大阪万博の水と空気のスペクタクルショー「アオと夜の虹のパレード」のプロジェクトの責任者を務めていた田中直基さんです。田中さんが仕事をしていくうえで、何気なく引っかかっている3つの言葉について話を伺いました。

 

逃げ出したいときの心の処方箋

田中さんが心に残っている言葉。そのひとつはある先輩の体験談だったそうです。その話に田中さんが救われた思いがしたのは、当時田中さんが仕事でしんどくなっているタイミングでした。この体験をしたのは田中さんの大学の先輩で、田中さんと同じように仕事がしんどくなった結果、その先輩は会社に行くことが無理になってしまい、上司や先輩に何も告げず突然3日間会社に行くのをやめました。

ただ真面目な人ほどそんな感覚になったことがあるんだと思いますが、日が1日、2日と経つにつれて、「先輩や後輩は怒っていないだろうか?」「心配していないか?」「仕事はちゃんと回っているんだろうか」と逆に心配が増えてきてしまう場合があります。田中さんの先輩も例にもれず、会社のことが日に日に心配になり、4日目におそるおそる会社に出社すると、会社の先輩が開口一番「お前最近見なかったな」だけだったそうで、会社はその先輩が出社していようといまいと、何も変わっていなかったそうです。結局ためてしまっていた仕事も別の人がカバーしてくれて解決していました。

この先輩の体験談から、もうどうにもならなくなったら逃げてもいいんだと思えば、田中さん自身すごく気分が楽になったと言います。営業をやっていたときも、活躍されている今でさえ逃げ出したくなるときはあるそうです。そんな逃げ出したいときのちょっとした心の処方箋になっているようです。

 

生き物のなかで逃げ出して怒られるのは人間だけ

次に田中さんが教えてくれた言葉は、俳優の市原隼人さんが語っていた「生き物の中で逃げたら怒られるのは人間だけだ」。切り抜き動画もしくはSNSか何かでたまたま見たという言葉。これを実際に調べてみると、たしかに市原隼人さんは発信していました。

それによると市原隼人さんは小学生がある新聞に採用されていた投書に目が留まったと言います。人間以外の動物はたしかに自分の身に危険が及ぶと全力で逃げます。でも人間だけが逃げ出すと臆病と言われたり、なぜか逃げるという行為は敗者となることが多いことはたしかです。田中さん自身はなぜ市原隼人さんがそんなことを言っているかわからないと言っていましたが、市原隼人さんはたしかに発信していましたし、SNSでも同様の投稿がありました。

 

「体が休もうよってアラートを出しているだけ」の言葉に救われた

田中さんの話を聞いて、めざましい活躍の裏で人知れず様々な困難と闘っていることを知り、もっとも印象的な言葉がありました。田中さんは仕事が忙しくなったりすると、メンタルに少し不調をきたす時期が来ます。そしてこれは日本人にはありがちな価値観なのかもしれませんが、メンタルに不調をきたすと自分に原因があると考えがちで、それがまた不調を悪化させるような負のスパイラルに陥りがちです。田中さんも「俺って弱い人間なんだ」と思っていた時期が長かったと言います。

そんな中で田中さんが通っているメンタルクリニックの先生の言葉が、田中さんのそのメンタルの不調に対する感覚を劇的に変えてくれました。

先生曰く「体に何かしら変化が起きるってことは体が休もうよってアラートを出しているだけ」だと。例えば体を怪我したら痛いじゃないですか、もしかしたら血が出るかもしれないし、肌が腫れるかもしれない。メンタルの不調もそれと変わらないし、アラートが鳴っているだけだから、そのアラートを受け止めればいいだけだと。

このメンタルクリニックの先生の言葉を聞いて、メンタルの不調について恥ずかしいとか弱いみたいなことを考える必要が全くなくなったそうです。

 

「逃げる」のではなく「逃がす」生き方

活躍している裏でどんなことが起こっていたり、考えていたりするのかについては、実際に話を聞いてみないとわからないことが本当に多いと思います。田中さん自身も「僕はいろいろ強そうにやってますが、やっぱりものづくりをしているときは、結構ギリギリな状態になります」と笑います。逃げたくなるような瞬間が今もあるのは予想外な話ではあったんですが、そこを抱え込むのではなく、しなやかに逃がすための術を今回は伺えました。

プロフィール

望月大作(もちづきだいさく)

Webマガジン「まえとあと」編集人

1982年生まれ、京都府出身。同志社大学大学院修了後、複数の企業勤務を経てフリーランスに。編集・執筆・企画などを手掛けている。ほかにレグザ「みるコレ編集部」編集長も務める。

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