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ビジネスの鉄則「仕事は忙しい人に振れ」の意味 考え過ぎないことの効能

枡野俊明(曹洞宗徳雄山建功寺住職)

2025年06月02日 公開

ビジネスの鉄則「仕事は忙しい人に振れ」の意味 考え過ぎないことの効能

私たちは日々、何かを「し過ぎる」ことで、知らず知らずのうちに心をすり減らしています。

心配し過ぎる、気をつかい過ぎる、怒り過ぎる、期待し過ぎる、我慢し過ぎる、働き過ぎる、調子に乗り過ぎる──。

本稿では「し過ぎない」ことのうち、特に「考え過ぎない」ことの大切さに焦点を当て、適度なバランスを見つけるヒントを曹洞宗徳雄山建功寺住職の枡野俊明氏に解説して頂きます。

※本稿は枡野俊明著『「し過ぎない」練習』(クロスメディア・パブリッシング)より一部を抜粋編集したものです。

 

「考え過ぎない」について

本稿では「考え過ぎない」ことについて深掘りしていきましょう。

どうすべきか考えれば考えるほど、不安や心配の妄想が大きくなり、なかなか動き出せなくなることは誰にでもあります。よからぬ妄想が大きくなると、なおさら動けなくなって悪循環に陥ってしまいます。

考え過ぎて不安や心配の妄想が大きくなる前に動き出すことには、さまざまなメリットがあります。

まず、先延ばしを防ぐことができます。

浅はかな行動は失敗を招くもとになりますが、長く考えつづけると行動が後手後手に回ります。

たとえば、一週間後に提出しなければならないレポートがあったとします。

レポートをつくるためには、最初に資料を集め、それを読み込んで要点をまとめ、自分の意見を述べる。その手順はわかっていても、考え過ぎる人は、資料集めの段階であれこれ悩んで考えあぐねてしまいます。

資料集めだけに何日もかけて、資料の読み込みにすら進めません。こうして、期日までにレポートを仕上げられず、おざなりに提出することになります。

考え過ぎない人は、これかなと思った資料をとにかく読んで要点をまとめてみます。それがちょっと違うなぁと思ったら、また違う資料を当たってみます。このようにして自分の意見をボトムアップさせていきます。そして40点から60点へ、さらには80点へ、レポートを仕上げていきます。

考え過ぎなければ、「やるべきことは何か」がより明確になります。考え過ぎない人は、やるべきことが見えているからこそ、先延ばしするようなことはありません。

そして、素早く行動することでチャンスをいち早くつかむことができます。競争が厳しい現代社会において、多くのチャンスは一瞬で消えてしまうものです。考え込んでいる人は、チャンスを逃す確率が高くなるでしょう。

 

考え過ぎない人は成長できる

考え過ぎずに行動を起こせる人は、実際の経験からいろいろなことを学ぶことができます。素早く行動することで、それをベースに修正しながら進むことができるので効率的に成果を上げられます。行動を起こさなければ、いろいろな人からフィードバックも得られません。

考え過ぎない人は、しっかり考えてから行動する人より失敗は多いかもしれません。しかし行動力は目標実現への第一歩であり、たとえ失敗しても、そこからさまざまなことを学ぶことができます。「即行動」が自分自身を成長させてくれているのです。

用心の上に用心を重ねて、慎重にものごとを運ぶことを「石橋を叩いて渡る」といいますが、用心に用心を重ねた結果、行動しない"石橋を叩いても渡らない人"がいます。考え過ぎて動けなくなる人は、まさにこのタイプですね。

よく言えば慎重で冷静な人ですが、それが過ぎれば優柔不断な人と受け取られてしまいます。机上の空論ばかりで行動を起こさない人は、実際の経験から得られる成長やスキルの習得ができません。

 

即行動は他者への思いやりでもある

私も、考え過ぎず、即行動を常に意識しています。

その意識のあらわれが、仕事を溜めないことです。来た仕事はすぐその場で処理します。あとでやろうと思って放っておくと、どんどん仕事が溜まって処理しきれなくなります。

もちろん、庭園デザインとか書籍の執筆などボリュームのある仕事は継続的にこなしていきますが、他の1~2時間でできる仕事は、継続中の仕事に割り込ませてササッとやってしまうのです。礼状などなら、最初の2~3行を書き出してしまえば意外と早く終わります。

出版社から送られてくる原稿のチェックなど戻し日が決まっているものも、期日に合わせてではなく、届いたら真っ先に読んでしまいます。そうでなければ、仕事が重なってくるとうっかり忘れてしまう場合もあります。

挨拶状や礼状書き、原稿チェックなどは早く仕上げれば、先方にとってもうれしいことでしょう。即行動は自分自身のためでもあり、他者への思いやりでもあるのです。

オフィスでも、部下から「ちょっと見てください」という書類を、「あとで見ておくから、そこに置いて」とあと回しにする上司は多いでしょう。しかし、すぐ見て判断してあげれば、部下はムダな時間を過ごさずに、すぐに次の仕事に進めます。

「仕事は忙しい人に振れ」──これがビジネスの鉄則とされています。

忙しい人は常に多くの仕事を抱えているため、効率的な仕事の進め方を身につけています。

優先順位の判断が早く、時間管理がうまいので、その結果、新しい仕事を追加されてもスムーズに取り組むことができるというわけです。忙しい人は、考え過ぎない人の代表ともいえるでしょう。

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