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なぜ人気?伊豆アニキンのシロップファミリー 写真家RIKUが撮るホワイトタイガー

RIKU

2025年06月03日 公開

なぜ人気?伊豆アニキンのシロップファミリー 写真家RIKUが撮るホワイトタイガー

ホワイトタイガー親子の愛らしい姿を収めた写真集『とらのこ』が話題です。日本各地でおもにネコ科動物を撮影しSNSで発表しているRIKUさんの2nd写真集で、伊豆アニマルキングダムで暮らす歴代7頭の「とらのこ」たちと母トラ・シロップの日常を切り取っています。

5月9日に発売されると、たちまち重版が決定。読者からは「猛獣なのに可愛すぎる」「親子愛が尊い」「子どものトラも可愛いけどお母さんも愛嬌たっぷり」といった感想が寄せられています。注目の写真集とホワイトタイガー親子について、伊豆アニマルキングダム広報の稲葉崇さんに聞きました。(写真はすべてRIKU著『とらのこ』より)

 

ホワイトタイガーの日常を流すライブ配信が大人気

――写真集『とらのこ』が話題です。本書の主役であるホワイトタイガーたちについて教えてください。

『とらのこ』に登場するのは、伊豆稲取に位置する総合レジャー施設・伊豆アニマルキングダムで暮らすホワイトタイガーたちです。2014年生まれの「シロップ」と、その子どもたちの写真が収められています。

2018年生まれの姉妹「アール」と「グレイ」、2020年生まれの「バニラ」「ホイップ」「メレンゲ」三姉妹、そして2024生まれの「ツキ」「シグレ」きょうだいです。

2018年、2020年生まれの姉妹たちは、現在は他の施設で暮らしています。

RIKU著『とらのこ』
2018年生まれの姉妹「アール」と「グレイ」

RIKU著『とらのこ』
2020年生まれの「バニラ」「ホイップ」「メレンゲ」

――ツキとシグレはYouTubeで大変な人気だとか。

ツキとシグレ(通称ツキシグ)は昨年9月12日に生まれました。その約1週間後からYouTubeでライブ配信を開始。私たちも初めての取り組みだったので、親子の安全面やストレスに最大限に配慮し、伊豆稲取の山中のネット環境と格闘しながらの配信となりました。

まだ目も開かずヨチヨチ歩きの赤ちゃん時代から現在に至るまで、ツキシグの成長をたくさんの方に見守っていただいています。

1日の再生数は多い時では9万回にも上り、同時接続者数が3000人を超える日もあります。何か特別なイベントがあるわけでもなく、ただただ親子の日常を流しているだけなのですが(笑)。

RIKU著『とらのこ』
女の子の「ツキ」

RIKU著『とらのこ』
男の子の「シグレ」

――人気のシーンや時間帯はありますか?

夕方にお腹を空かせて獣舎に帰ってきて、お肉を食べている時間はコメント欄が盛り上がっています。特に毎週水曜日は大好きな丸鶏を与えているので、一番視聴者さんが増えています。

きょうだいでお肉を取りあったり、母シロップのお肉を子どもが横取りしようとして「シャー!!(ガオー!!)」とこっぴどく叱られていたり、時にはシロップが子どもたちに一番美味しい部位を譲っていたりと、様々な人間模様ならぬ「トラ模様」が見られる時間です。

また、ネコ科らしい食後のグルーミングから、満腹でうとうとしはじめ、仲良く「寝落ち」する時間もまったりとしていて、その様子に癒されている方が多いようです。

――どのようなコメントが寄せられていますか? 

配信初期は、ツキとシグレの見分けに関するコメントが多かったです。シロップは今回を含め3度の出産と子育てを経験していますが、初代と2代目の子どもたちは顔立ちが似ていて、私でも見分けが難しかったです。

一方ツキとシグレは生まれたときから比較的個性がはっきりしていて、オスのシグレは体が大きく額に木の葉のような模様が、ツキは体が小さく額に炎のような模様があり、視聴者の方々も識別を楽しんでおられるようでした。

この2頭は行動も個性的で、シグレはシロップのミルクが大好きで、小さい頃は何かと不器用で愛嬌がありました。最近はキリっとイケメンになってきたと評判です。

ツキは写真集でも「あざとい」という説明書きがあるとおり、シグレやシロップにあごをのせて眠る姿などが愛らしく、性格は勝ち気で動きは俊敏。母シロップに似た行動をすることも多いです。

RIKU著『とらのこ』
元気いっぱいに走るツキシグ

 

母トラ・シロップの驚きの身体能力

――母トラのシロップは2014年に生まれてからずっと伊豆アニマルキングダムで暮らしていますね。

はい、この4月に11歳の誕生日を迎えました。

実は私は2014年4月にここに入社したので、シロップとはまさに「同期」なんです。

私は飼育担当者ではありませんが、シロップの子ども時代から3度の出産・育児を間近で見させてもらいました。

母・メープルに大事に大事に育てられた箱入り娘シロップは、子ども時代はふっくらした体型でした。しかし、幼少期から高い身体能力が備わっていたことがわかるこんなエピソードがあります。

ある朝、飼育員が展示場で小さな咬傷のあるカラスの死骸を発見しました。実はシロップは、カラスから、近くに降りてきては面前で飛び立つといういたずらを日常的にされていたのです。このカラスの死骸は、状況的にシロップの「狩り」によるものだと考えられました。カラスが油断していたところを仕留めたのでしょう。

野生のトラであっても、飛んで逃げる獲物を捕まえることは至難の業です。まだ子どもだったシロップが狩りを成功させたのは驚くべき出来事でした。

今でもその運動能力は健在で、お肉を催促してダイナミックなジャンプを見せてくれることがあります。11歳にしてツキシグと全力で遊ぶ姿も見られます。元々の身体能力もさることながら、シロップが健康で丈夫に過ごしてくれていることを「同期」としてとても嬉しく思います。

RIKU著『とらのこ』
三つ子育児中のシロップ

――シロップの3度の出産・育児をどのように見つめてきましたか?

シロップはファンの方から「賢くてやさしい育児上手」と言われていますが、私もまさにその通りだと思います。

そんな偉大なる母シロップも、2018年、初産だったアールとグレイの育児では、だいぶアタフタしていたと記憶しています。赤ちゃんの首根っこを咥えて運ぶ通称「ママトラキャッチャー」「ママクレーン」は、今ではシロップの代名詞とも言えますが、当時は力加減がよく分からず苦労している様子でした。次第に赤ちゃんへの接し方が上手になってゆき、ママとして日に日に成長していくのを肌で感じました。

その2年後に三姉妹が誕生した時には、育児スタイルがほぼ確立されていました。ただ、飼育スタッフが「赤ちゃんが遊べるように」と投げ込んだボールや木の枝で一番楽しんでいたのはシロップ......という、大人げない一面もみられました(笑)。時には童心に返って遊ぶところも、シロップの魅力です。写真集『とらのこ』でも無邪気なシロップの姿が激写されているので探してみてくださいね。

そして、ツキとシグレが誕生した昨年から、ライブ配信を通してシロップの偉大さがたくさんの方に知られることとなり、ファンの皆さんから称讃の声が挙がっています。強く逞しく、そして愛嬌たっぷりのシロップに注目していただけてとてもうれしいです。そして、多くの方に親子の成長を見守ってもらえるのが、こんなにも心強いとは思いませんでした。

RIKU著『とらのこ』
愛情たっぷり

RIKU著『とらのこ』
ママトラキャッチャー

RIKU著『とらのこ』
子どものイタズラに寛容なシロップ

 

2度と戻らない「とらのこ」時代が写真集に

――写真集『とらのこ』の反響はいかがでしょうか?

当園の公式オンラインショップで予約を開始したところ、想定外の注文が入り、半ばパニック状態でした(笑)。ツキシグ人気とRIKUさんの写真の素晴らしさは理解していたものの、まさかここまでの反響があるとは、正直驚きでした。

無事発送も完了し、「届きました」「可愛い」といった感想を拝見し、今は一安心......といったところです。

――RIKUさんは2018年に生まれた「アール&グレイ」姉妹の頃からシロップファミリーを撮影していますね。

RIKUさんのSNSでシロップファミリーの様子がバズっているのを嬉しく拝見しておりました。ツキシグが誕生して、今回もぜひ撮影していただきたいと思っていたのですが、まさか写真集というかたちで結実するとは思いもよりませんでした。

RIKUさんはいつも他のお客様にとても配慮しながら撮影されており、そして意外にも、カメラのファインダーを覗いている時間が少ないんです。

動物たちの決定的瞬間を撮り逃さないよう、終始レンズを向けているのかなと思いきや、その"決定的"が起きた瞬間だけシャッターを切っているのです。その一瞬を逃さず、たくさんの「傑作」を写真に残していらっしゃることに驚きました。

――『とらのこ』でイチオシの写真はありますか?

親バカもあり、全ての写真が素晴らしいので、選ぶのはとても難しいです。あえて選ぶとすれば、「生後12日。ツキは元気に起きています」とコメントが添えられたツキとシグレの写真は特に好きです。これは、ツキシグの体重測定を兼ねた限定イベントで撮影された1枚です。

この時期はまだ赤ちゃんたちの一般公開はしておらず、イベントの数分間しか撮影できるタイミングはなかったのですが、RIKUさんは何度もご来園されて写真を撮っていらっしゃいました。

この時から、RIKUさんとツキシグの日々が始まったんだなと思うと感慨深いものがあります。

RIKU著『とらのこ』
生後12日のツキシグ。ツキ(左)は元気に起きています

――最後に、『とらのこ』読者にメッセージをお願いします。

2度と戻らない「とらのこ」時代を写真集という形にしていただけたことは、シロップファミリーと歩みを共にしてきた我々にとってもこの上ない喜びです。

写真集では赤ちゃんだったツキとシグレも生後8ヵ月。まだまだ元気に成長中です。

これからの季節は、屋外展示場のプールでツキシグが水遊びをしたり、シロップが気持ちよさそうに水浴びをしたりする姿を見られるかもしれません。

11歳という年齢を考えると、おそらくシロップにとってはこれが最後の子育てになると思いますので、シロップとツキ&シグレにぜひ会いにいらしてください。


 

【RIKU】
愛犬のミニチュアダックスフンドを飼い始めたことをきっかけに一眼カメラを購入。2016年に動物園でトラとユキヒョウを見て動物の美しさに感銘を受け、本格的に写真を撮り始める。会社員として働きながら、休日に日本全国の動物園に足を運び、主にネコ科動物を撮影。SNS を中心に作品を発表し、Instagram、X などの総フォロワー数は36万人を超える。2023年に刊行した初の写真集『ほぼねこ』(辰巳出版)は大ヒットとなり、世界的動物写真家の岩合光昭氏や M-1グランプリ王者「令和ロマン」松井ケムリ氏、人気コラムニストの辛酸なめ子氏らから称賛の声が寄せられた。

Instagram:@riku_0710

X:@rikunow

【伊豆アニマルキングダム】
伊豆稲取温泉の高台に位置し伊豆七島を見下ろす広大な総合レジャー施設。ホワイトタイガーやライオン、チーターなどの猛獣から、キリンやサイ、エゾヒグマのような巨大な動物たち、カピバラやアルパカなど癒し系動物や、ハリネズミやミーアキャットなどの小動物、フラミンゴなどの美しい鳥たちがのびのびと暮らしている。

HP:https://izu-animal-kingdom.com/

Instagram:@animalkingdom_official

X:@izu_anikin

YouTube:伊豆アニマルキングダム公式チャンネル

https://www.youtube.com/@IZUANIMALKINGDOM/streams

※本書の収益の一部は伊豆アニマルキングダムのホワイトタイガーたちのために活用されます。

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