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パリで「古事記」を歌った女子大学院生

2019年07月11日 公開

吉木誉絵(慶應義塾大学大学院生<当時>/神主)

吉木誉絵

<<6月20日にデビュー作『日本は本当に「和の国」か』(PHP研究所刊)を上梓した新進気鋭の研究者・吉木誉絵(よしき・のりえ)氏。

1986年生まれの吉木氏は高校時代、アメリカ・ノースダコタ州に留学し、隣州で起こった先住民族の少年の銃乱射事件がきっかけとなり、民族のアイデンティティについて考察を深め、その過程で『古事記』の研究に着手。慶應義塾大学大学院修了後から、コメンテーターとしてテレビなどのメディアに出演。2018年、第一子を出産し、現在は子育てをしながら研究活動を続ける。

そんな吉木誉絵氏が大学院在学中、2013年に月刊誌『Voice』に古事記と出会った経緯を寄稿していた。ここでその記事を抜粋して紹介したい。>>

※本稿は月刊誌『Voice』2013年1月号より一部抜粋・編集したものです。

 

なぜ20代の女性が「古事記」と出会ったのか

「Bravo!」「Tres bien!」

賞賛の言葉とたくさんの拍手が、まだ息が上がったままの私を包む。歌い手として出場し、無我夢中で歌い踊った、パリのジャパン・エキスポでの「古事記」のステージ。「ついに、ここまで来ることができた」と感極まり、涙が滲む。精一杯、心を込めて1万人以上の観客にお辞儀をし、ステージを後にした。日本に古事記が誕生して1300年という節目の年に、どうしても、日本人のルーツを世界に伝えたかった。その願いが実現した瞬間だった。

パリで毎年行なわれるジャパン・エキスポは、海外では最高規模を誇る日本文化の博覧会(ただし主催は日本ではなく、フランスである)で、開催第13回目となる2012年の動員数は20万人を突破し、過去最高となった。

日本のアニメやゲーム、コスプレなどのサブカルチャー、着物、畳や和小物、鎧兜、薙刀、禅や武士道、そして日本のアイドルや、若い女子に流行っている原宿ファッションなど、多岐にわたる日本文化を紹介している。

アニメのキャラクターのポスターで飾られ、巨大な鳥居が中央に据えられた会場内では、各種ブースが連なり、ジャパン・エキスポを心待ちにしていた人びとが、フランスのみならず、欧州各国から皆こぞってやってくる。

そのジャパン・エキスポで、古事記のショーを披露した。ステージでは古事記を説明するVTRを流したあと、有名なシーン「天の石屋戸」でアメノウズメノ命が舞いを披露する場面をダンサーが再現。

さらには神話に由来する日本の美しい土地を映像で流しながら、それに合わせて篠笛や三味線などの和楽器を演奏した。最後に私が「佐久弥レイ」という芸名で、古事記をテーマにした曲『ひとつの物語り』を歌と踊りで披露させていただいた。

ジャパン・エキスポ最大規模のメインステージに出演したほか、イベント会場内に設置されていた文化ステージでのショーはどの回も満員で、立ち見のお客さんで溢れるほどだった。計5回、1万人ほどの前で古事記のステージを行なった。

2012年は古事記が編纂されて1300年。島根、奈良、宮崎県など神話に由来をもつ土地では神話博物館が建てられたり、古事記にちなんだ音楽祭が開催されたりもした。雑誌でも特集が組まれ、書店では古事記に関係するコーナーが設置され、シンポジウムや講演会なども多数行なわれた。

ただ、それらはあくまで日本の神話に興味がある人が好む少し格式が高い内容であったし、逆にいえば興味がない人はなかなか近寄りがたかったものだったとも思う。

しかし、もっと普遍的な力が古事記にはある。大げさにいえば、現代に蔓延る問題を抜本的に解決する力を秘めているとすら、私は感じている。

なぜジャパン・エキスポで古事記なのか。どうして私のような20代の娘が古事記に関心を抱くようになったのか。その経緯に少しばかりお付き合いいただければと思う。

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