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[松下幸之助経営塾講義再録] 「ありがとう」と感謝される商売人生に



2013年01月18日 公開

中嶌武夫 (ナカリングループ代表、メルセデス・ベンツ中央会長)

《『PHPビジネスレビュー松下幸之助塾』2013年1・2月号Vol.9 より》

「松下幸之助経営塾」は、経営者を対象にした松下幸之助の経営哲学を学ぶための公開セミナーです。

一流の講師陣による講話も魅力の1つで、『PHPビジネスレビュー松下幸之助塾」では、その要旨を抄録しています。

今回の講師は、中嶌武夫氏です。

中嶌武夫
(なかじま・たけお)
ナカリングループ代表、メルセデス・ベンツ中央会長

1926年兵庫県生まれ。小学校代用教員を経て、1946年早稲田大学入学。1948年アルバイトとして働いていた自転車店の倒産で債権債務を引き継ぎ店主に。1951年早稲田大学卒業。1956年〔有〕中島輪業設立。1962年〔株〕ナカリンオートに改組。1977年東京銀座三菱自動車販売〔株〕設立。1982年港三菱自動車販売〔株〕設立。1986年東京ダイヤリース〔株〕設立。1988年メルセデス・ベンツ中央(〔株〕シュテルン中央)設立。2000年運輸大臣賞。2002年黄綬褒章。

 

店主の夜逃げで経営者に

 今年(平成24[2012]年)1月に86歳になりましたが、おかげ様でなんとか元気でやっております。私は兵庫県の山村に生まれ、8人きょうだいの次男です。17歳のときに小学校の代用教員となり、2年後に軍隊に入ったのですが、2カ月で終戦になりました。

 その後、教員にいったん復帰したものの、戦前とは教育内容がすっかり変わり、学問をきちんと身につける必要を感じたこともあって、大学で学ぼうと東京に出てきました。

 ある日のこと、私が間借りしている家に出入りしていた当時10歳年上の30歳の男性が、「自転車店を始めようと思っている。中嶌君、オレの手伝いをしないか」と言ってきました。自分の仕事がなかったこともあり、自転車店を手伝うことにしました。

 2年くらいたったころ、その先輩が、「中嶌君、自分の荷物をまとめろ」と言うのです。理由を尋ねれば、「今晩ここをすぐに引き払う」と。夜逃げです(笑)。借金でどうにもならなくなったのでしょう。

 そんなこと言われても困りますよね。住む場所がなくなってしまう。故郷に戻るわけにもいかない。なぜなら、東京へ発つときに学校の教え子から「がんばって」という温かい言葉で見送られた先生が、東京から夜逃げしてきたなんて、しゃれにもなりません。断ることにしました。それで先輩に、「自分が店のあとを引き継ぐ」と告げたところ、「よくぞ言ってくれた。そのかわり借金返済を頼む」と(笑)。

 おかしな経緯ですが、こうして23歳のとき、私の商売人生が始まったのです。

(中略)

 

松下幸之助と商売の意義

 私は農家の生まれです。米をつくるのに、そのころ機械はもちろんなく、すべて手作業。まさに八十八の手がかかる。お金というのは、言わば血と汗の結晶である米と交換に得られるものでした。だから、農業はとても尊い生産労働だと思っていたのです。

 こうした環境で育つと、商売というのはどうも納得がいかない。100円で仕入れて130円で売る。儲けた30円のどこに血と汗があるのかと。泥棒をしているような気になります。

 たとえば、「この商品は100円で仕入れたので130円で買ってください」と言われて買うお客様はいないでしょう。お客様が「高いよきみ、まあ110円だな」と言えば、こちらは泣き面で「110円では足が出る。勘弁してください」と答える。するとお客様が「ほかで同じ商品が119円で売っていたから、118円なら買う」と言ってくれば、やむなく「分かりました」と泣き顔のまま応じる。でも腹の中では、「18円儲かったな」と思ったりするものです。

 要するに、だましっこです。そこに納得がいかなかった。こういう迷いがあるときに、松下幸之助先生の講演会に参加しました。そして、最後の質疑応答で、この自分の迷いを話してみたのです。すると松下先生は、にこにこ笑みを浮かべて、こうおっしゃいました。

 「それはね、あなたの間違いです。お客さんは、あなたが売った自転車に乗って喜びを感じたり、仕事の役に立てたりしている。だから、だましているのではありません。このように人や世のお役に立つということこそが、商売なのです」

 目からウロコが落ちる思いがしました。商売の目的は金儲けではなく、人様に喜んでいただくことなのかと。そして、人様に喜びを差し上げることで自分にも喜びが返ってくる。たったそれだけのことかと思われる方もおられるでしょうが、そのときは松下先生の言葉に「そうだよな、そうだよな」と心底思いました。それから、私なりの商売に対する見方が次第にできあがっていったのです。

三者鼎立の原則

 ナカリングループの理念は、三者鼎立の原則です。

 私達は仕事を通じて人・世の為に捧げ盡(つ)くすことにより真の喜びを会得することを目的とする
 その目的を達成するためには次の三者が等しく共に満足されなければならない
 一 お客様のご満足
 一 会社の発展
 一 社員の幸福

 お客様と会社と社員が三者等しく共に、どこにもかたよらず、ほんとうに喜び満足を感じるようにすることこそが商売なのだ、というように私は考えたのです。松下幸之助先生から教えていただいたことも、こうした考え方を形成するきっかけになりました。この三者鼎立の原則を定めて以来、朝礼の席ではむろんのこと、会議を始める前にも必ずそれを唱和しています。

 ☆本サイトの記事は、雑誌掲載記事の一部分を抜粋したものです。記事全文につきましては下記本誌をご覧ください。(WEB編集担当)

<写真>86歳ながら立って塾生に話をする中嶌氏。毎朝の呼吸法が健康の秘訣だ

 

 


◇掲載誌紹介◇

『 PHP Business Revew 松下幸之助塾』 2013年1・2月号Vol.9 

発売日:2012年12月27日
価格(税込):1,000円
 
<今回の読みどころ>
 1・2月号の特集は「使命感に生きる」。遡ること80年余、若き経営者松下幸之助は、ある出来事をきっかけに「産業人の真の使命」を感得し、その使命を全従業員に語った。それ以降、社主である幸之助はもちろん、社員のあいだに流れる空気もぐっと変わって、力強い経営ができるようになったという。本特集では、経営者として、あるいは個人として、使命感に燃えて活動を続ける7人の情熱にふれてみた。
 そのほか、女性経営者の活躍をレポートした「輝く!町工場の底力」や、自殺志願者の救助と自立支援に取り組む牧師の使命感と挑戦を描いた「一人一業・私の生き方」なども見どころ。

 

BN



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