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2年間収益ゼロから大逆転 「スイカゲーム」開発者が明かす差別化戦略

程涛(issin株式会社 代表取締役CEO)

2026年02月09日 公開

2年間収益ゼロから大逆転 「スイカゲーム」開発者が明かす差別化戦略

世の中は、すでにアイデアであふれている。既存のものからの差別点を見出し、自分のアイデアの価値を高めるためには、どうするべきか。あの「スイカゲーム」を開発した連続起業家・程涛氏の著書より、「発想の種」に気づくためのコツを解説する。

※本稿は、程涛著『道具としてのアイデア』(日経BP)より一部抜粋・編集したものです。

 

目標を実現するための価値ある差別化を行う

実現しようとしている取り組みは、既存のものとどう違うのか。その違いによってどんな価値を生み出すことができるのか。差別化は自分を納得させるためにも、チームの仲間を増やしていくためにも、顧客の心をつかんで事業を成功に導くためにも不可欠なものなのです。

これを私は最初の事業の立ち上げから数年の間に痛感しました。

popIn創業時に開発したWeb関連のツールは、収益化が難しく、丸2年間、収益ゼロが続きました。

悩んだ私は、popInの技術を使いながら、海外で登場した斬新な広告を真似ようと考え始めました。既存の市場で上位にいる会社の手法を日本に合うようにアレンジしたら通用するのではないか、と。

実際、その発案に興味を持ってくれるクライアントもいました。しかし、結局は勝負に出ることができずに終わります。理由は、相手がいずれ日本の市場に入っていることが見えていたからです。あちらは海外のリーディングカンパニーで、経験もリソースも大きい。小さな会社だったpopInではとても戦いになりません。

何より、「あなたたちの広告サービスは、あの会社のサービスと何が違うのか?」と聞かれたとき、独自性をアピールすることができないことに気づいていたため、信念を持って動き出すことができなかったのです。

その後、私は事業をピボット(事業の方向転換や路線変更)し、2014年にローンチしたのがネイティブ広告配信プラットフォームの「popIn Discovery」でした。

 

何を生み出すのかを明確にする

popIn Discoveryとは、オンラインメディアの記事ごとの読了率を可視化し、読者の興味に合った記事を自動的にレコメンドするサービスです。

当時のオンラインメディアでは、記事が本当に読まれたのかも、読者が興味を持っていたのかもわかりませんでした。そこで、私たちは、記事に興味を持って読み進めたかを判断する仕組みを作ったのです。

そして、読了率の高い記事に関連した別の記事や広告を「こちらの記事もいかがですか?」「こちらの広告もご覧ください」とレコメンドしていくことを可能にしました。

つまり、「読了率がわかる仕組み」と「レコメンド機能」、この2つが差別化となり、強みになったのです。

 

popIn Discoveryの独自性

1 読者が記事に興味を持ったかどうかがわかる仕組み(= 読了率)
2 読者の興味に応じた、ユーザー目線の最適なレコメンド(= レコメンド機能)

 

信念を掘り下げることが、差別化の源泉にもなる

この差別化がうまくいった背景は、誰かの真似、誰かのゲームのルールに並ぶサービスを提供するのではなく、「自分たちで独自のルールを作る」を信念にプラットフォームを開発したことにあります。

これは、「ゲームのルールを自分たちで決められれば小さな会社でも戦える」と気づいたことがきっかけでした。

ゴールデン・サークルで言えば、「WHY」で「なぜ自分が、自分たちがこれをやるのか」「誰のためにやりたいのか」を掘り下げ、「HOW」で差別化できるポイントを探っていったイメージです。

大切なことなので繰り返しますが、「WHY」に十分な時間をかけず、信念の準備不足のまま動き出すのは、NGです。

方向を誤り、差別化できずに終わる失敗パターンに陥ってしまいます。私が海外でうまくいっている広告配信プラットフォームの真似を考えてしまったのも、「早く収益を上げたい」と焦ったために軸がブレてしまったからです。

この気づきは他のビジネス、あるいは個人の目標達成にも当てはまります。心から納得している「行動の動機=信念」があれば、それ自体が差別化の要素となるのです。

例えば、私はプロダクトの構想を練るとき、次のように「WHY(なぜ)」「HOW(どのように)」「WHAT(何を)」を活用しました。

 

popIn Aladdin

WHY:家族が共に過ごす時間を増やし、思い出を作り、子どもの世界観を広げたい
HOW:日常にあるシーリングライトにプロジェクターを内臓し、家の壁を大画面に変える仕組み
WHAT:世界初の照明一体型プロジェクター

 

スイカゲーム

WHY:小さな子どもでも親に勝てる「思い出の瞬間」を作りたい
HOW:4歳でも直感的にわかるシンプルな操作、親しみやすい可愛いデザイン
WHAT:誰もが夢中になれるパズルゲーム

 

スマートバスマット

WHY:家族の健康を日常的に守りたい
HOW:毎日欠かさず使うバスマットに体重計を組み込み、自然に計測できる仕組み
WHAT:数字を意識せず測定を習慣化できる、体重計一体型バスマット

 

考え抜いた信念と、自分で納得できるやり方が決まれば、それは他との差別化の要素となります。だからこそ、ステップ⓪とステップ①には十分な時間をかけて取り組みましょう。

他にも、日常的には、次のように活用できます。

 

リスキリングのために社内の有志を集めて、朝の勉強会がスタート

WHY:自由な時間を増やすために、各個人の生産性を高めたい
HOW:個人の専門性と経験知にAIを掛け合わせ、生産性を上げる方法を学ぶ

 

今年こそ、本気で語学を始めたい!

WHY:日本だけでなく、海外でも仕事ができる力を身につけたい
HOW:自分の語学レベルと、目的に合った学習方法を調べていく

プロフィール

程涛(てい・とう)

issin株式会社 代表取締役CEO/連続起業家

1982年 中国・河南省生まれ。東京工業大学(現・東京科学大学)卒。2008年 東京大学大学院情報理工学系研究科創造情報学専攻の修士在学中に、研究成果のpopInインタフェースを基に、東大のベンチャー向け投資ファンド「東京大学エッジキャピタル(UTEC)」の支援を受けて、東大発ベンチャー popIn株式会社を創業。2015年 中国IT大手のBaidu(百度)と経営統合。2017年 世界初の照明一体型3 in 1プロジェクター「popIn Aladdin」を開発。4年間でシリーズ累計販売台数25万台を突破し、異例のヒット商品となる。2021年4月 issin株式会社を創業。同年6月 popIn Aladdin版「スイカゲーム」を開発。12月にNintendo Switchソフト「スイカゲーム」を発売し、累計1200万DLを突破し大ヒットゲームとなる。

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