ビジネスや将来設計など、さまざまな場面で効果を発揮する「マトリクス思考」。場面ごとにマトリクスの構造を使い分ければ、さらに効果的だという。本記事では、チームを活性化させるための方向性を決める「チームビルディングマトリクス」のポイントを、書籍『マトリクス思考 2軸で切る、視える、決める』から紹介する。
※本稿は、グロービス経営大学院, 嶋田毅著『マトリクス思考 2軸で切る、視える、決める』(東洋経済新報社)より一部抜粋・編集したものです。
チームビルディングのためのマトリクス
チームリーダーを任された人は、組織運営やプロジェクト推進にあたり、自身のチームをより成果を出せる良い雰囲気のチームにしたいと考えます。現状を把握し、より良いチームとするためのヒントを得たいときに使用します。
このマトリクスは、チーム活性化状態に向けた方向性を確認するために使用します。はじめに、現状のチームの状態を観察し、チームがマトリクスのどの状態にあるのかを見極めます。個々人がどこにプロットされるかに加え、チームの平均的な位置がどのセルに入るかを確認します。
その上で、現状のチーム状態に合わせた施策をとることにより、マトリクスの右上の活性化状態を目指します。道筋は図に示したように大きく2つのものがあります。このマトリクスを用いることによって、チーム活性化状態に向けた適切なアクションをとることができるようになります。
心理的安全性×チャレンジ機会の構造

横軸は「チャレンジする機会が多い/少ない」、縦軸は「心理的安全性が高い/低い」に設定しました。
左下の象限「チャレンジする機会が少ない」×「心理的安全性が低い」における施策は「相互理解の深化」となります。ここに該当するスタッフが多い場合には、メンバーとのコミュニケーション機会を増やし、相互理解を深めることが効果的です。自己開示や他者理解を図る時間や雰囲気を作ることを意識しましょう。リーダー自らの意識や行動変容も求められます。自分のちょっとした言動がスタッフの心理的安全性を損なうことは多いものです。
左上の象限「チャレンジする機会が少ない」×「心理的安全性が高い」における施策は「活躍の場の提供」となります。ここに該当するスタッフが多い場合は、メンバーの個性を理解しつつ、過度に失敗を恐れるのではなく、スキル向上のために成長の機会の場を与えていくことが大切です。もちろん、任せっぱなしではなく、仕事ぶりをしっかり観察しつつ、適宜コミュニケーションをとることが必要です。
右下の象限「チャレンジする機会が多い」×「心理的安全性が低い」におけるは「多様性の承認(対等な関係作り)」となります。ここに該当するスタッフが多い場合は、多様な意見が否定されない雰囲気や、将来を見据えて本音が話せる雰囲気を作ることを意識することが求められます。ここでの「対等な関係」とは、利害関係を気にせず、伝えたい時に自身の本当の考えを言い合える関係とします。ここでもリーダー自らの意識や行動変容は大切です。
右上の象限「チャレンジする機会が多い」×「心理的安全性が高い」における施策は「活性化状態」となります。ここに該当するスタッフが多い場合は、議論が活発でメンバーの成長が見られ、結果が出る状態です。最終的には多くのスタッフがこの象限に入る状態を目指したいものです。
活用事例と留意点

プロジェクトチームのリーダーに抜擢されたAさんは、より成果を出す良い雰囲気のチームにするためにはどうしたらよいか考えました。ヒアリングなどを通じてチームの現状を観察すると、4人いるメンバーの心理的安全性が概ね低く、チャレンジする機会も少ないようです。
つまりチーム全体としては平均して「相互理解の深化」のセルに入ることがわかりました。そこでAさんは、まずチームメンバーの相互理解を深めるため、コミュニケーションをとる機会として交流の場を増やすことで、自己開示や他者理解を図る時間を作り、また雰囲気の改善に努めました。自分自身の言動にも注意するように努めました。
次に、心理的安全性が高まってきたタイミングを見計らって、メンバーに対して、彼らの失敗を恐れず、スキル向上のために成長する機会を多く与えるようにしました。自身でできる支援も最大限行いました。すると、チーム内の議論も活発になり、また1人1人の成長が見られ、良い結果を出すチームへと変わり始めたのです。
チームリーダーとして、1人で働きかけを行っても、チーム全体の雰囲気をすぐに変えることは難しいものです。自身の考えに賛同し、協力を得られるメンバーをチーム内に徐々に増やしていることで、チーム作りを加速することができます。
また、チャレンジの機会の付与は個々人の能力以外に、他メンバーとの兼ね合いに左右される場合もあります。個人の状況に加え、他のメンバーとの分担や相性なども勘案して適切なアサインメントとすることが必要です。








