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元乃木坂46・中元日芽香がカウンセラーへ転身した理由 「3列目の端の劣等感」適応障害を乗り越え

中元日芽香(心理カウンセラー)

2026年02月20日 公開

元乃木坂46・中元日芽香がカウンセラーへ転身した理由 「3列目の端の劣等感」適応障害を乗り越え

乃木坂46のメンバーとして活躍していた中元日芽香さん。しかしその一方で、競争の激しい芸能界の荒波にもまれて劣等感に苦しみ、情緒不安定に。「適応障害」という診断を受けるに至ります。初めてカウンセリングを受けた中元さんは、その力に衝撃を受け、人生を変える決断をしました。現在は心理カウンセラーとして活動する中元さんが、心の声に耳を傾け、自分と向き合うことの大切さを語ります。(取材・文:辻 由美子)

※本稿は、『PHP』2026年1月増刊号の内容を一部抜粋・再編集したものです。

 

お腹がすいているわけではないのに、気がつくと食べている

東京ドームの暗闇に、ピンクのペンライトが揺れていました。それは私が今まで見たライブのなかで、一番美しい光景でした。その2カ月後、私は乃木坂46を卒業したのです。

小さいころからダンスが大好きだった私は、中学3年生のとき、乃木坂46のオーディションを受け、合格。広島から上京しました。

異変が起きたのは、それからまもなくでした。お腹がすいているわけではないのに、気がつくと食べている。その間だけは気持ちが落ち着きますが、食べ終わると自己嫌悪に陥り、体重の増減を繰り返すようになりました。

原因は、乃木坂46の選抜メンバーになれなかったこと。選抜メンバーはメディアに数多く出演しますが、選ばれなかった"アンダーメンバー"には、あまりその機会がありませんでした。アンダーメンバーになった私の心には、いつも劣等感が渦巻いていました。

絶対に選抜メンバーになりたい。その一心で活動し、17歳のとき、念願の選抜メンバーに選ばれました。でも、そこは私が想像していた世界ではありませんでした。今度は、チームのなかで自分をどう表現していくのか、新たな課題が私を追い詰めていったのです。

 

人に話すと、自分に向き合える

あいかわらず食生活は乱れていて、さらに不眠や肩こり、頭痛など体の不調が加わりました。今思えば、明らかに心が悲鳴をあげている状態でした。なのに私は「疲れているだけだ」と自分を鼓舞し、その場しのぎの対症療法でごまかしていたのです。

その後、またアンダーメンバーになりましたが、20歳で再び選抜チームに復帰。でも、心身はもうボロボロでした。選抜チームに入っても、私の位置はいつも3列目の1番端っこ。どんなにがんばっても、これ以上前に行けないとわかってしまったのです。

このころから、情緒はさらに不安定になっていきました。わけもなく突然涙がこぼれて止まらない。ついには、朝、体が動かせず、どうしても仕事に行けなくなりました。

人一倍がんばり屋のはずの私が、仕事を休むなどあり得ないこと。それなのに、マネージャーさんに「休みます」と電話をかけなければならないつらさ。でも、いったん休むと決めると、すーっと体が軽くなります。

どうにかして元気にならなければと訪ねた心療内科で、思いがけず「適応障害」と診断されました。この不調は、私の怠慢や不真面目のせいではなく、病気だったんだ。そうわかった途端、ホッとしました。

そのときすすめられたのが、カウンセリングを受けることでした。初めてのカウンセリングで、その力に驚愕しました。
人に悩みを相談するのが苦手だったのに、たった2時間、カウンセラーの方に話を聴いてもらうだけで心が落ち着き、前向きになれたのです。人に話すことで、自分の気持ちにきちんと向き合えるのだと知りました。

 

いいところも、ちゃんと見よう

世の中に、こんなすてきな仕事があったんだ。いつか自分もこんな仕事につきたい。そう思った時点で、芸能界をやめる決心はついていたのだと思います。11月に東京ドームでのライブを終え、その年いっぱいで乃木坂46を卒業。心残りはありませんでした。

しばらく休養したのち、早稲田大学に入り、心理学の勉強を始めました。認知行動療法やカウンセリング学などを学び、在学中から心理カウンセラーとして活動を始めました。

プロになった今、振り返って思うのは、自分で自分の心をケアすることの大切さです。私は、自分のできなかったことや欠点を過大に見がちでした。でも、過度に自分を卑下しても何にもならない。いいところも同じくらいの比重で評価してあげることで、自分の機嫌を自分でとれるようになりました。

自分の感情に振り回されず、自分の気持ちをまずはフラットに受け止める。行き詰まったときは、自分が喜ぶことは何か、自分の心の声を聴いてあげる。そうすると心が整理され、落ち着くことができます。

紆余曲折ありましたが、今、私はこの仕事に出合えて本当によかったと思っています。世の中に無駄な経験は一つもない。苦しい時間があったからこその今を、大切にしたいです。

プロフィール

中元日芽香(なかもと・ひめか)

心理カウンセラー

1996年、広島県生まれ。早稲田大学人間科学部eスクール卒業。2011年から6年間、アイドルグループ「乃木坂46」のメンバーとして活動したのち、'17 年にグループを卒業。その後、認知行動療法やカウンセリング学などを学び、'18年にカウンセリングサロンを開設、心理カウンセラーとして活動を始める。

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