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竹中平蔵・世界で活躍することは、誰にでも可能だ!

竹中平蔵(慶應義塾大学教授/グローバルセキュリティ研究所所長)

2013年03月19日 公開 2022年10月27日 更新

◆日本語の意味をしっかり理解すれば、英訳もしやすくなる

英語で語る際にまず問われるのは、その日本語の意味をしっかり理解できているかどうか、ということだ。たとえば「TPPについて議論が相半ばする」を英語で言うとき、この「相半ばする」という日本語の意味を正確にとらえられなければ、語ることはできない。

だが、逆に「相半ばする」の意味がしっかりわかれば、そのものズバリの英訳を知らなくても、中学生レベルの英語で十分表現できる。たとえば、“Some are supportingTPP.some are not”とでも言えば、意味は通じる。

また、アメリカでよく行われる英語のトレーニング法で、「パラフレーズ」というものがある。パラフレーズは、ある表現を他の語句に置き換えて述べることを指す。たとえば、“I asked him a question.”なら、“He was asked a question by me.”にするというものだ。

実は、これはもともと、自分の書いた論文を盗用と言われないための訓練なのだ。ある人の論文を参考にするとき、そのまま丸写しするのは知的マナーとして認められない。そこで同じ内容を別の言い方で表現するための訓練をするのである。

“Japan realized 10% growth in 1960's.”なら、“In 1960's Japanese growth rate was more than 10%”などと置き換える。思いついた言葉を英訳し、さらにパラフレーズにする。これならいつでもどこでもできるので、思いついたときに遊び感覚でやってみるといいだろう。

◆興味を持った分野の単語なら、ぐっと覚えやすくなる

もう1つ簡単にできるものとして、あるエコノミストから教えてもらった方法がある。それは、中学の英語の教科書を声に出して読むというものだ。

難しい語彙を使っても、それが会話の場合、ネイティブ同士でも通用しないことが少なくない。特に我々外国人は、平易な表現で十分。中学校の英語の教科書を丸暗記するぐらい覚えれば、日常的に最低限必要な文法や単語はマスターできる。

一方、語彙を増やす方法としては、何かコンセプトをつくるといいだろう。たとえば世界塾の講座の1つ「英単語道場」では、提携しているタイム社の雑誌から私が記事を1つ選び、これを教材にして、英語の先生が単語を解説するという授業を行っている。

これは、たとえば中国について講義をする日なら、『タイム』誌から中国について書かれた記事を選ぶ。すると、講義を聞いて中国について関心を持っているので、それに関連する単語がぐっと覚えやすくなるのだ。単語帳をつくってやみくもに丸暗記していくより、興味を持った事柄に関するもののほうが、人間、覚えやすいものだ。

そして、その解説のあと、私がまた中国について話をする。人間の記憶は、何度も繰り返して覚えたほうが定着する。中国についての私の講義を聞きながら、先ほど学んだ英語も思い出し、記憶を定着させるのが狙いである。

◆英語はネイティブだけではなく、日本人教師に習え

そして、これは多くの日本人が誤解していることだと思うが、実は英語を学ぶにあたっては、アメリカ人のネイティブから英語を学ぶこともさることながら、英語の得意な日本人から学んだほうが参考になる場合がある。というのも、英語の得意な日本人の話す英語のほうが、「なるほど、こういう言い方をするのか」「こういう聞き方をするのか」といった気づきが多いからだ。

日本人同士、考え方が似ているので、言いたいことも似ているもの。自分にとって必要な表現を使うのは、アメリカ人より日本人のほうが多いはずで、それだけ学ぶこともたくさんあるのだ。

さらに、授業に出席するときは、最前列の席に座ることが重要だ。英語に自信がないと、つい後ろのほうに座りがちだが、最前列と最後列では理解力がまったく違ってくる。最前列に座ると、肌で音波を感じられる。英語を話すときのちょっとした表情の変化もわかる。つまり、五感を使って学べるのだ。

あるいは、わからないことがあったとき、ちょっと小首を傾げれば先生が気づいて、もう一度話してくれることもある。そういう意味でも、最前列に座ることには大きなメリットがある。これは日本語で行われる講演などを聞くときも同じだ。

また、会議などで議論が始まったときは、ものおじせず、最初に発言することだ。ネイティブ同士で本格的な議論が始まったところに、ネイティブでない人間が入っていくのはなかなか大変だ。だから最初に自分が議論の道筋をつくってしまうわけだ。その後、ネイティブ同士の議論になっても、少なくとも自分が提示したテーマなので、議論の流れを追いやすくなる。

英語のセミナーを受けるときも、事前に「必ずこの質問をしよう」と決めておく。このようにタフで、ポジティブな気持ちを持つことが、外国語を勉強するときは必要となるのだ。

とはいえ、結局は地道な努力の積み重ねしかないのも事実。一晩寝て目覚めたら、英語の脳になっていたなどという、うまい話はない。

 

竹中平蔵

(たけなか・へいぞう)

慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所所長・総合政策学部教授、経済学博士、アカデミーヒルズ理事長、〔株〕パソナグループ取締役会長。

1951年生まれ。一橋大学経済学部卒業後、日本開発銀行に入行。その後、大蔵省財政金融研究所主任研究官、大阪大学経済学部助教授、ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学総合政策学部教授を歴任。2001年には小泉内閣で経済財政政策担当大臣に就任し、02年金融担当大臣・経済財政政策担当大臣、04年経済財政政策・郵政民営化担当大臣。05年からは総務大臣・郵政民営化担当大臣をつとめ、現在に至る。
著書に、サントリー学芸賞受賞『研究開発と設備投資の経済学』、エコノミスト賞受賞『対外不均衡のマクロ分析〈共著〉』(以上、東洋経済新報社)『経済古典は役に立つ』(光文社)『竹中教授の14歳からの経済学』(東京書籍)『政権交代バブル』(PHP研究所)『「改革」はどこへ行った?』(東洋経済新報社)などがある。

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