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「部下の指導が上手くいかない」マネージャーの仕事とは何か

佐藤剛(グロービス経営大学院教授)

2014年09月03日 公開 2022年07月12日 更新

 

マネジャーの具体的な仕事内容

マネジャーの仕事内容に関しては、日本型組織と欧米型組織の違いは基本的にありません。目的は同じであり、多少手法が違うことはあっても、本来マネジャーのあるべき姿も同じです。マネジャーの具体的な仕事の基本は、次のようなものです。

◇方針説明をする

会社として決定された戦略を、状況や目標に応じて自分が束ねるチームの最終ゴールに翻訳して、チームとしてのミッションを明示することが重要な仕事となります。

日本企業のほとんどのマネジャーはそれができていないように思われます。そのため全社的な経営戦略から階層的に物事を考えることができず、個別の行動の間に論理的な整合性を確認せず「役員の指示だから」などと、受け身の態度をとりがちです。

また、マネジャーの能力として、会議での意思決定の手法や作法を身につけていることは、非常に重要です。会議室の空気で結論を決めることを嫌うことと表現してもよいです。優秀なマネジャーほどそこに長けています。マネジャーの大部分の仕事は意思決定であり、それはまた最初に示された部署としての方針を確認する作業を繰り返すことでもあります。

◇仕事を割り振る

1人ひとりの部下の経験を踏まえて、得意そうな仕事を割り振ったり、逆にやったことのない仕事を経験させたりします。

◇部下に適切なフィードバックをかける

日常業務の進捗状況のチェックや問題解決を行います。管理行動とも呼びます。部下によってフィードバックのかけ方も変わります。

たとえばその部下にとって初めての仕事であれば、ある程度懇切丁寧に指導し、経験ある部下だったらざっくりとした指示だけで、あとは定期的に確認するだけにとどめます。熟練度だけではなく、きめ細かく管理されるのがいやな部下はある程度まかせておくなど、性格によっても対応が変わります。

◇部下にやる気を起こさせる

フィードバックと同じで人によってやる気の起こる要因は違うので、そこは見極める能力が重要となります。やる気はとても重要なテーマなので、項を改め説明します。

なお、会議で、手続きの公平さが感じられるほど。部下は動きやすいものです。発言者に対してネガティブな意見でも。それが相手に対してネガティブな評価にならなければ、よいフィードバックにつながり、会議は活性化します。つまり。個人的な問題にせず、あくまでも議論の内容を深めるという姿勢がよりよい意思決定につながります。

会議のときに気まずくなるのは、「お前が言ったから反対する」と属人的な考え方に囚われてしまっているときです。それに対して、会社のミーティングルールが判断基準になっていると、気まずくなりません。たとえばアマゾン社の「リーダーシップ・プリンシプル」による明示などがその一例です。

 

マネジャーの権威はどこから来るのか

マネジャーの権威の源は、ひとことで表わせば会社内における公式の権限です。部下を評価するということは、社内でのポジションや給与の決定に影響を与えることができるということです。

また、目的合理性に適った考え方で、マネジャーが判断しているから従うという理由になります。マネジャーの判断の前提として、最終的に組織の目的を達成することが大事だと考えるからです。

しかし、マネジャーの行動が目的合理性に欠ける状況における部下の対応は、日本型組織と欧米型組織で違うようです。上司の指示についての合理性に疑問が出てくると、欧米型組織であれば部下の動きは著しく鈍くなります。日本の場合は仕事の中身よりも人に従うという傾向かあるので、目的合理性に欠けていても素直に言うことを聞いて行動しがちのようです。

いずれにしろ、組織から公式に付与されるだけでなく、日常的に合理性を自覚し、そこからブレないように行動しないと、マネジャーの権威は損なわれる危険性があるといえるでしょう。

ジョンーガードナー(John Gardner,Leaders and followers,1987)は、マネジャーになれば部下は与えられるが、フォロワーは獲得しなければならないと指摘しています。

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