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「プライドが高くて迷惑な人」への対処法とは

片田珠美(精神科医)

2014年10月16日 公開 2023年01月11日 更新

他人の意見や助言を聞かない人への対処法

 他人の意見を聞かないのは、多くの場合、プライドが高く自分が常に正しいと信じ込んでいるためである。そのため、自分が間違っていたと認めることはめったにないし、自分とは異なる意見に興味を示すこともほとんどない。

 もし他の誰かが明らかな間違いや誤りを指摘したとしても、あるいは別の意見のほうが妥当だということを明確な根拠にもとづいて示したとしても、せいぜい「そういう見方もあるかもしれませんねえ」などとあいまいに答えるのが関の山である。

 一事が万事この調子で、とにかく他人の話を聞かない。会議でも、他の人がまだ発言しているのに、平気で中断して話し始めることもあるので、しばしば反感や怒りを買うが、本人は全然気づいていない。

 こういう人を説得するのは至難の業である。あなたが説得しようとして熱弁を振るえば振るうほど、向こうは自分のほうが正しいと意固地になるだろう。自分の殻に閉じこもって、自分の考えにますますしがみつくようになる可能性が高い。

 しかも、たとえ内心では間違っているかもしれない、別の考えのほうが正しいかもしれないと密かに思っていたとしても、それを表に出すようなことはしない。他人に説得されて意見を変えることは、自分のほうが劣っていたと認めることと同じだと考えているので、そんなことが他人に知られてしまうのは恥以外の何物でもないと感じており、プライドが許さないのである。

 なので、無理に説得しようなどという気は起こさず、真正面からぶつかるようなことはしないのが賢明だろう。とりあえず向こうの意見を聞いたうえで、「そんなふうにお考えになるのはどうしてなのですか?」「どういう根拠にもとづいているのですか?」などと尋ねてみてはどうだろうか。明確な理由も根拠もなく、単に個人的な経験や思い込みだけでものを言っている場合が少なくないからである。

 もっとも、こういう人は自分が絶対正しいと思い込んでいるので、たとえ明確な理由も根拠もないことが露呈しても、意見を変えるわけではない。むしろ、ますます固執する可能性が高い。このような場合は、「それは、あなたの意見ですよね」とか、「それは、あなたの考え方ですよね」という言い方で、他の意見や考え方もあることをほのめかすしかない。

 善かれと思って助言しても、向こうが聞き入れないこともあるだろう。私も精神科医として患者さんや家族の方に助言しても、受け入れていただけなくて困ったことが何度もある。そのときの経験から言えるのは、そういう場合はいくら説得してもムダだということである。

 では、どうすればいいのか? 私は次のように言っている。

 「〜したほうがいいとは思うけれど、他人の私が100%あなたの立場に身を置いて感じたり考えたりできるわけではないですよね。まあ、助言を受け入れて実行するかどうか決めるのはあなた自身なので、強制はしません」

 こういう言い方は少々冷たいように聞こえるかもしれないが、プライドの高い方に対しては結構有効なようである。しばらくしてから、「〜することにしました」という報告を聞くことが少なくない。

 どうも、「助言を受け入れて実行するかどうか決めるのはあなた自身」というのが決め台詞のようで、他人に言われたから自分のやり方を変えたわけではなく、あくまでも自分で決めて実行したのだと自分に言い聞かせることができるためらしい。

 もちろん、診察室での医師─患者の関係と、職場や家庭での人間関係は別物なので、一概には言えないものの、「プライドが高くて迷惑な人」に対しては、顔をつぶさないようにしながら、こちらの意見や助言を押しつけるのではなく、ほのめかす程度にしておく配慮が必要だと、つくづく思うのである。

著者紹介

片田珠美(かただ・たまみ)

精神科医

広島県生まれ。精神科医。京都大学非常勤講師。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。パリ第8大学博士課程中退。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析的視点から分析。『無差別殺人の精神分析』(新潮選書)、『一億総ガキ社会』(光文社新書)、『一億総うつ社会』(ちくま新書)、『正義という名の凶器』(ベスト新書)、『他人を攻撃せずにはいられない人』(PHP新書)など著書多数。

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