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トヨタのリーダーは、トヨタウェイを語る~現場を動かす言葉



2014年11月07日 公開

若松義人(トヨタ式の第一人者)

《PHPビジネス新書『トヨタのリーダー 現場を動かしたその言葉』》

リーダーの熱意が現場を変える

 トヨタ式で最も大切な考え方の1つが「モノづくりは人づくり」だ。

 「モノをつくる前に人をつくれ」という「人づくり」の大切さを説いた言葉だが、「モノづくりは人づくり」にはもう1つの大切な教えがある。「モノづくりを通して人を育てる」という考え方だ。

 人を育てるためにはいくつものやり方がある。学校のように座学を中心として知識や技術を教えるやり方もあれば、通信教育のように1人ひとりがテキストを使って同じように知識や技術を身につけるやり方もある。当然、トヨタでもこうしたやり方は取り入れているが、それ以上に大切にしているのが日々の仕事を通して人を育てていくというやり方だ。

 座学や通信教育などを通して人はたくさんのことを学ぶことはできるが、「知恵を出す」とか「やり切る」といった力は日々の本気の仕事を通して初めて身につけられるのではないだろうか。大野耐一氏はしばしば「困らなければ知恵は出ない」として、部下を困らせることが上司の役目だと言っており、実際、筆者も大野氏の課す難題に幾度も困惑したものだ。しかし、決して諦めることなく挑戦することで、知恵を出すことを覚え、最後までやり切る力を養うことができた。

 トヨタの強さを様々に分析する人がいるが、トヨタの真の強さは、トヨタのすべての現場において「モノづくりを通して人を育てる」ことが今も貫かれている点にある。そしてそれを支えているのがそれぞれの現場で慟くリーダーであり、リーダー1人ひとりが成果を追う一方で、人づくりも自分の使命であると自覚しているからこそトヨタは強くあり続けることができる。

 どの企業でも現場のリーダーには厳しい目標が課されている。どうしても数字をはじめとする目標の達成が主になりがちだが、その一方で忘れてはならないのはリーダーには「人を育てる」という責務もあるということだ。人を育てながら成果を上げることはとても難しいことだ。つい人づくりを疎かにしたくなることもあるだろうが、大変だからこそ人づくりを大切にしてほしい。人を育てることは遠回りに見えて、実際には成果を上げるための最善の策なのだから。

 本書『トヨタのリーダー 現場を動かしたその言葉」に登場したリーダーはいずれも難しい課題に直面し、何とか突破口を見つけようと必死になって知恵を出し、部下をまとめ、部下の力を引き出すことで目標を達成しようとしている。そこから生まれた言葉には厳しいものも少なくないが、「もっといい仕事をしたい」「人を育てたい」という思いが根底にあれば人は動くし、現場は変わるものである。もし「人が動かない」「現場が変わらない」と嘆くリーダーがいるとすれば、自分の本気や人づくりへの熱意が本物かどうかを問い直してみることだ。「熱意は人から人に伝わる」という言い方があるが、リーダー自身の本気こそが人を動かし、現場を助かす最大の原動力なのである。

 今、日本からモノづくりの場が失われようとしているが、だからこそ各企業のリーダーは今以上にモノづくりに限らず現場を大切にして、現場を通して知恵ある人を育てる責務がある。人は仕事を通してこそ磨かれ、そして育てられる。本書で紹介したトヨタの現場から生まれたたくさんの言葉を通して、現場の素晴らしさ、現場こそが人を育てるということをご理解いただければこれにまさる幸せはない。

 本書にご登場いただいたたくさんのトヨタマンの中には筆者がよく知る人もいれば、本や雑誌を通して知った人も少なくない。いずれもが現場で戦い、現場で磨かれ、そして現場で人を育てた素晴らしい人ばかりである。元トヨタマンとして誇らしく思うとともに、トヨタ以外の企業にもこうした素晴らしいリーダーがいるからこそ今の日本があると心の底から思わずにはいられない。


★本書では、トヨタのリーダーたちが、部下を動かし、現場を奮い立たせた言葉100を掲載しています。ここでは、その一部をご紹介します。


 

◆トヨタのリーダーは、部下に基本を教える

やりたいようにやれ。その代わり結果を出せ。

 トヨタが、日本初のプレミアムブランドを目指してレクサスの開発にとりかかったとき、レクサス企画部のメンバーたちは、上から「ブランドをつくれ」とは言われたものの、具体的な指示はまったくなかった。

 お金も人も最初から用意されていたわけではなく、普通なら「これだけでは無理です」となるところだが、室長の長屋明浩氏はそれを逆手にとって会社にこう掛け合った。

 「好き勝手にやりますから、何でも認めてくださいね」

 イエスもノーもなかった。だが、長屋さんは勝手に「OK」と解釈した。あとはメンバー1人ひとりの「工夫」に任せた。いくつもの会議を立ち上げ、役員の出席も求め、人やモノを集めて少しずつ「レクサスブランド」を体現する車をつくりあげていった。その過程では難しい課題への挑戦も多かったが、メンバーの「こうしたい」「こんな高級車をつくりたい」という提案に対しては、こう言った。

 「やりたいようにやれ。その代わり結果を出せ」

 やりたいことがあれば思い切って提案すればいい。「どうするか」は1人ひとりが考えて、やりたいようにやればいい。もちろん失敗もあれば成功もあるだろうが、失敗は糧にしてさらに挑戦すればいい。そして最後に結果を出せ。これがトヨタの基本的な考え方だ。

 

お前、プロだろう。

 「モノづくりは人づくり」はトヨタの現場で最も大切にされている考え方の1つだ。9代目「カローラ」のチーフエンジニアを務めた吉田健氏は、「車づくりをしながら、僕は、人づくりをしているんじゃないかと考えること」がしばしばだったという。

 メンバーにトヨタのフィロソフィーを叩き込み、自分が目指していることを何百回もくり返し、メンバーと何度も何度も対話をする。可能な限りメンバーに権限を委譲して、彼らの個性に任せるのが吉田さんのやり方だ。なかには「全面的に任される」ことをためらう人間もいるという。そんな彼らに対して、吉田さんはこう投げかける。

 「お前、プロだろう」

 たとえ若くても、経験が浅くても、仕事の場ではみんなが「プロ」である。プロだったら、任された課題がどんなに難しくても、自分の頭で考えて、自分の責任で精一杯の仕事をして、そしていい結果を出せるはずだ。

 お互いがプロだからこそ真剣勝負ができるし、喧嘩腰の本気の議論だってすることができる。吉田さんの「人づくり」は、「お前、プロだろう」と思い切り突き放して、自分で考えさせるものだ。考えるところに知恵が生まれ、そして知恵の数だけすぐれた車をつくることができる。仕事はプロである個人と個人のぶつかり合い。それがトヨタのやり方だ。

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