女性のための老子<7>「善行に轍跡なし」
2015年12月01日 公開 2024年12月16日 更新
善行とは、跡も残らない自然な道
さあ今月は、善行とはどのような行ないなのかについて、古代中国に書かれた世界的名著『老子』第27章から、学んでみましょう。私たちは、子供のこから自分が社会や人の役に立ち、必要とされている、と思えることで喜びや満足を感じることができます。「あなたのおかげよ」なんていわれると、つらい仕事も頑張ることができますし、時にはそれが生きる張り合いにさえなります。ですから、人のためと思ってした良い行ないが評価されたり、表彰されたりすると非常に喜び、また逆に誰も気付いてくれないと不満に思ったり、がっかりしたりします。ですが、『老子』は教えています。本当に天の道に沿った善行とは、誰がやったかわからない、跡さえ残さず、恩にもきせない自然の行動だというのです。
あたりまえの日々こそ大切に
たとえば、母親が子供を育てる時は、恩を感じてほしいなんて気持ちは全くありません。熱を出せば寝ずに看病し、食欲がなければ心配して、食べられそうなものをつくる。その母親の姿こそが、誰にも表彰されないけれど、最も無為自然の善行なのではないでしょうか。私たちはつい、自分の人生について考える時、形として残っている華やかな表彰や社会での地位、財産など、他人に賞賛されるような形あるものを探してしまいがちですが、実は本当に大切な人生の価値は、そこにはないのです。夫や子供や仕事に向き合って、迷ったり悩んだりして、頑張って乗り越えてきた日々の積み重ねこそが、あなたの大切な人生の宝なのです。そしてあなた自身が、その宝に気付くことで、あなたには、明るい明日が開かれることでしょう。さあ、胸をはって前進しましょう。あなたの明るい人生の旅は、まだ始まったばかりなのです。