「これ以上引きずらない」ためのストレス対処法
2016年10月27日 公開 2023年09月12日 更新
「意図的」でなければコーピングにはならない
先ほども述べたとおり、この作業をするだけでもストレスの緩和になります。とはいえ、この悪循環を放置するのはよくありません。そこで認知行動療法では、ここから一歩進んで「コーピング」を行ないます。これはストレスを軽減すべく「意図的な対処」をするということです。
これも難しく考える必要はありません。「大好きなラーメンを食べる」「カラオケで思い切り歌う」「子供の写真を見る」など、なんでもいいのです。ストレスの悪循環に陥っている自分を助けてくれることなら、すべてコーピングになります。
ただし重要なのは、「意図的である」ということ。たとえば「お酒を飲む」がコーピングになるのは、「私はお酒を飲むとリラックスできるから、仕事で頑張った日はシャンパンを飲む」などと意図して行なう場合です。これが「お酒を飲むのがやめられないから飲む」という場合は、単なるアルコール依存症の症状になってしまいます。あくまでも、「これが自分のストレスに対処する方法である」と意図したうえで行なうのがコーピングであると理解してください。
さらに、もう一つ知っておきたいことがあります。それは、直接的にコーピングできるのは、「認知」と「行動」に限られるということ。「ストレス状況」「気分・感情」「身体反応」は、コーピングの対象になりません。なぜなら、これらは私たちが直接コントロールできないからです。上司に叱られたことがストレス状況だとしても、その上司を職場から追い出すことはできないし、相手の性格を変えることもできません。「いつもハッピーでいよう」と思っても、落ち込んだりイライラしたりといった気分・感情が生まれるのを防ぐことはできないし、心臓がドキドキしたり汗をかいたりといった生理的反応も、自分ではどうすることもできません。
でも「認知」と「行動」は自分でコントロールが可能です。確かに認知が思い浮かぶのは止められませんが、私たちはそのあとで「思い直し」ができます。「書類の山は見たくない」という思いが浮かんでも、そのあとで「1枚だけ手をつけてみようかな」と思い直すことはできるはずです。あるいは、叱られたときの上司の顔が思い浮かんだあとに、褒められたときの上司の顔を思い出してみることもできるでしょう。認知を新たに生み出したり、別の認知を思い浮かべようと工夫することは可能なのです。
同様に、「行動」も自分で選択できます。上司に叱られたとき、強く言い返すこともできれば、笑顔で「アドバイスをいただき、ありがとうございます」と言うこともできる。自分の助けになる認知や行動を選択することで、ストレスを軽減させることができるのです。