怒ることで組織は蘇る
2011年11月01日 公開 2024年12月16日 更新
エネルギーを目標へ向ければ、怒りは組織を動かす推進力になる
上司が常に頭を痛めているのは、部下を動かすにはどうしたらいいかということではないでしょうか? 部下を動かして、最終的には何も言わなくても人に動いてもらうことができたら究極の喜びです。職場であれば、目的としてそこに到達することは可能です。
人は言葉1つでは動きません。それこそじっくり観察をしたうえで、部下が動きたいと思うように怒るということは、部下のモチベーションを上げるということです。
では、部下はどうしたらモチベーションが上がるのだろうと考えると、一人ひとりの部下が会社に何を求めているのか、人生に何を求めているのかを知ることなのです。
それを知ったうえで、だったらこう動くことが君の人生にとってプラスになるんだよと考えていくのです。先行きを見据えるのです。
それには観察に時間をかけることです。ずっと観察し続けて、ログをつけてその社員が会社の中で喜んでいる瞬間を見ておくことです。部下のコアビリーフの中には、何を喜びたいかが書かれているはずです。それを見て、そこをつついてあげる、つまりモチベーションを上げるためのトリガーを引いてあげましょう。
例えば、それが年収アップのためだったら比較的単純です。「これがうまくいけば社長賞100万円くらいもらえるらしいよ」とか「これをやると、次たぶん係長に昇進しやすくなるよ」と、目標が見えやすくなるからです。
ただし、ここではそれが響く人と響かない人とにはっきり分かれます。お金のことばかり言う人間もいるし、お金よりも製品が売れること、とりあえず自分の仕事が認められることがベストな人もいます。
中には、早く帰れるのがベストな人もいるわけです。そういう部下の価値観というか、コアビリーフを探るためにも、自己開示をお互いの中で日々やっていくということが、まず前提にあります。
だから上司がログをつけてあげて、部下の話をよく開くということです。そして、彼が喜んでいるところをよく見ます。喜びの瞬間は表情を見ればすぐ分かります。アンガーログとも違う、部下のハッピーログは上司の心に焼き付けておいてください。
部下に対して言いたいことをどう伝えるか。そのための怒り方のコツはだいぶつかめたことと思います。今度は組織においてその怒りが何につながるかを考えましょう。
かつて『上司が「鬼」とならねば部下は動かず』(染谷和巳著、プレジデント社)という本がありましたが、やはり怒りには強いエネルギーがあるので目的達成のためにそれを使わない手はありません。怒りをうまく活用して、大きな原動力にすれば、生産性も間違いなく上がります。
結局、怒りというのは、悔しさや自分に対する怒りもすべてエネルギーになるものです。そういうものがないと組織自体も生産性が上がりません。
一方、日本にはさまざまな世界に職人さんがいて、いいものをつくってやるという気概を感じます。恐らくそれが一匹狼的生き方をしている職人さんの目的だと思います。人生で何をしたいのですかと尋ねたら、彼らはたぶん、お金とか名誉とか地位よりもいいものをつくることだと言うのではないでしょうか。
「いい仕事をしてますね」という一言をもらうために、いや実際に言葉がほしいわけではなく自分に嘘をつかない仕事をすることに全身全霊をかけている。怒りをぶつけています。