ある日突然、過呼吸で倒れた30代エリート
2018年03月04日 公開 2023年09月08日 更新
過呼吸に苦しんだエリートはどう立ち直ったのか?
ある日突然「過呼吸」の発作が起き、倒れてしまう……。そんなビジネスマンが増えているという。しかも、それは普段「エリート」と呼ばれる人に多い。その背景には、増え続けるメンタルの問題があった。自身もかつて過呼吸に苦しめられた中島輝氏が、誰もが直面する可能性のある過呼吸の症状とその対処法を説く。
日曜の夜、それは突然襲ってきた
Aさんは都内の大手企業に勤める30代の営業マン。社内の業績もよく、将来を嘱望されていました。ところが社内の人間関係に悩み、徐々に心身の不調を訴えるようになりました。私がカウンセリングを担当するようになってまもなく、日曜日の夜に突然、携帯電話が鳴り、助けを求めるAさんの声が聞こえてきたのです。
過呼吸の発作でした。私の家からAさんの自宅までは車で10分ほど。玄関のカギを開けておくよう伝えてすぐに駆け付けると、Aさんは白目をむいて全身を引きつらせ、床に倒れていました。
Aさんに呼びかけると、すぐに意識は取り戻したものの、発作はすぐには収まりません。持参した使い捨てカイロで冷えた体を温め、背中をさするなどして、1時間ほどでようやく落ち着きを取り戻すことができました。
しかし、Aさんの発作はこれ一度では治まりませんでした。1週間後にも再び発作を起こし、救急車で運ばれることになってしまったのです。
私自身も経験があるのですが、過呼吸はまた発作が起こるのではないかと不安になるほど、再発しがちなもの。しかも、発作が起きようとするときに我慢しようとすればするほど、症状が悪化しやすいものなのです。
過呼吸発作はメンタルが弱いから起こるのではない
過呼吸の発作を起こしてしまった人が最初に考えるのは、おそらく「自分はこんなにメンタルが弱いんだ」ということではないでしょうか。むしろ、メンタルが強いと自負してきた人も少なくないでしょう。それまではバリバリに仕事をしてきた人が多いのが、過呼吸を起こす人の特徴です。それなのにある日突然、ストレスが原因と見られる発作を起こしてしまった。Aさんもショックだったと思いますが、過呼吸を起こす人は多かれ少なかれ、そうした傾向が見受けられます。
ではAさんは、本当はメンタルの弱い人だったのでしょうか。実は、過呼吸に苦しむ人の多くは、むしろメンタルが強い人といっていいのです。責任感が強く、問題が起きても堂々と立ち向かっていこうとする、仕事でも勉強でも、物事をやり切るだけの力がある――そんな人ほど、ちょっとしたきっかけで陥ってしまいやすいのです。
こうした人たちのことを、私は「逆メンタルが強い人」と言っています。強すぎるがゆえに、無理をして限界を超えたところまで踏ん張ってしまう。そのことに気づかないでいると、身体が反応して過呼吸発作を引き起こしてしまうのです。むしろ、「自分はとても強いメンタルの持ち主なのだ」と視座を変え、そこに生存を見出していくことが必要になるのです。