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CAの仰天アナウンスが熊本の航空会社を救った―天草エアライン危機突破の物語

黒木亮(小説家)、河合薫(健康社会学者/気象予報士)

2018年08月13日 公開 2019年04月03日 更新

 

CAの99.5%は肉体労働。だからお客様の「ありがとう」がうれしい

黒木 私は金融マン時代、中東やアフリカの航空機ファイナンスを手がけていたので飛行機のことはある程度知っているつもりでした。しかし今回取材させてもらって、CAさんの訓練はこんなに大変なものだったのかと驚きました。

特に緊急時対策の訓練はものすごく厳しいもので、天草エアラインでは「泣くまで訓練する」くらいの覚悟で取り組まれるそうです。我々が機内で目にしているCAさんの姿は、本当に氷山の一角だったんです。

天草エアラインでは人員に限りがあるので、全部自分でやらなければならない。だから、大手航空会社に遜色ない、むしろそれ以上の技量を持つ人がたくさんいました。

河合 私の新人のころ、各便にフライトエンジニアの方が3人載っていました。みなさん大きなかばんを持っていて、中に入っているのは分厚いマニュアルでした。

あるとき、そのマニュアルを「持ってごらん」と言われて手渡されたのですが、信じられないほど重かった。するとフライトエンジニアの方が「これが命の値段なんだよ」とおっしゃったんです。

さらに、「自分たちはこのマニュアルは絶対覚えない」と。マニュアルを覚えたつもりで仕事をすると、必ず自己流で処理してしまう局面が生じ、大事故につながってしまう。だから覚えない。プロに徹するって、こういうことなんだと学びました。

『島のエアライン』にも、現場の魅力的な方々がたくさん登場します。この本の読者の方に安全なフライトを支えているスタッフの姿が伝わるとうれしいですね。

そこで、私も読者の方に一つお願いがあります。天草エアラインでも、ほかの航空会社でも、飛行機に乗ったら降りる時に、「楽しかった」「ありがとう」と一言CAに声をかけていただけないでしょうか。

黒木さんもおっしゃいましたが、CAの仕事は大変な重労働で、99.5%は肉体労働、外から見える華やかな姿は0.5%です。彼女たちは、お客様にごくごくたまに言ってもらえる「ありがとう」の一言で元気をもらえ、「またいいサービスをしよう」という気持ちになれるんです。

こんなふうに、地味だけど大切な仕事に感謝しあえるような社会は、素敵だなあと思いますね。

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