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未解決事件を風化させない! 覆面本「文庫X」が盛岡の書店から全国に波及した理由

2018年08月03日 公開

田口幹人(さわや書店フェザン統括店長)

田口幹人(さわや書店フェザン統括店長)

<<全国から熱視線を浴びる盛岡のさわや書店。本を売ることへの独創的な取り組みが注目され、多くの本好きを魅了する”本屋”である。

特にある書籍に”覆面”を被せて販売する販売企画「文庫X」は大きな話題となり全国の店頭を席巻。SNSが情報を網羅する現代において、謎の覆面の正体は明かされぬままに書籍はたちまちベストセラーとなった。

さわや書店フェザン統括店長である田口幹人が文庫Xの"正体"と文庫X現象について、その裏にある”本屋”の思いを語る>>

(本稿は田口幹人編著『もういちど、本屋へようこそ』(PHP研究所刊)より一部抜粋し、編集したものです)

 

半年で3万部を30万部に押し上げた「文庫X」現象

突然ですが、「文庫X」をご存じですか?

810円という定価以外、著者だけではなく、書名といった普通の本ならあるはずの情報を一切分からないようにした本が、2016年7月21日、さわや書店で展開されました。

僕が店長を務めていたさわや書店フェザン店の文庫担当・長江貴士が企画して展開をはじめ、半年の間に全国の650店を超える書店に広がった謎の本で、中の本に対する想いのみを書いたカバーを巻いて、ビニールをかけ、「文庫X」と題して店頭に並べられました。

展開前、発行部数が3万部だったその本は、全国の本屋で展開されてからわずか半年間で、30万部に達し、多くの読者の手元に届き、中の本を公表した現在もなお、売れ続けています。

この「文庫X」現象は、2016年12月9日に開催された「文庫X開き」というイベントで、中の本が発表されるまで続きました。厳密に言うと、それ以降も大きな話題となったのですが。

長江が自著『書店員X 常識に殺されない生き方』(中公新書ラクレ)の中で「文庫X」現象の肝としているのが、常識と先入観から逸脱することの意味でした。「文庫X」の広がりを支えたものとして、おそらくその問いかけは正しいのでしょう。

一方で、この現象を間近で見てきた者として、僕はまた別の角度から「文庫X」の広がりの意味を考えていました。その考えを書きながら、「文庫X」現象を振りかえってみたいと思います。

「文庫X」の中の本は、清水潔さんの『殺人犯はそこにいる』(新潮文庫)という作品でした。

この作品は、群馬県と栃木県の県境を挟んだ半径約10キロメートルという狭いエリアで発生した、五人の少女が誘拐され殺害された北関東連続幼女誘拐殺人事件を取材したノンフィクションです。

著者は独自取材によって、この事件の被疑者となった男性の無実を明らかにし、真犯人だと確信が持てる人物に辿りつきました。「冤罪事件」と野放しにされている「真犯人」を描くことで炙あぶりだされたのは、警察組織と司法の闇でした。

『殺人犯はそこにいる』は、過去の話ではなく、今を生きる私たちが知っておくべき社会の病理や矛盾を教えてくれる作品ではないでしょうか。

さわや書店「文庫X」その正体は…?
さわや書店店頭での「文庫X」。覆面カバーにもPOPにも書店員のあふれんばかりの本への思いが。その本質は単なる販売方法の奇抜さではない

客からの苦情で展開ができなくなった書店もあった >

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