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社会

子どもの摂取エネルギー量に格差が…広がる「日本の貧困」

阿部彩(社会政策学者),鈴木大介(ルポライター)

2018年10月25日 公開 2023年01月30日 更新

阿部彩

"飢えても万引きすらできない子"が排除されてきた

(鈴木)僕の取材はそうした生い立ちがあってその後に社会的に逸脱した子をターゲットにしていましたが、取材対象者の共通点は子ども時代に一晩でも「飢えた」経験をもっていることでした。

典型的なケースはお腹が減ってどうしようもなくて、コンビニのおにぎりやパンを万引きした経験。
もちろん実際食品を盗むことを覚えると他のものも盗むし、同じような環境にある子たちで互助的な非行グループを形成するし、グループになれば恐喝したりで、どんどん「良い子」じゃいられなくなってしまう。

でも問題なのはその子たちの逸脱した行動じゃなくて、その子らがそうなるまでの背景なんですよ。そこには確実に、絶対的貧困状態がある。
相対的貧困家庭の子の多くは一晩でも絶対的貧困状態を経験している可能性がある。これは声を大にして言いたい。

(阿部)本当にそうですね。

(鈴木)実は万引きできる子はまだいいんです。でも、盗めない子もいて、そういう子が一番かわいそうなんですよね。

お腹が減っても万引きできない子。思えば発達障害傾向でコミュニケーション力の低い子が多いかもしれない。死ぬほど空腹でも怖くなって盗めなかったり、あるいはやたらに規範意識が高くて限界を超えて我慢しちゃったり。

こうした絶対的貧困レベルにある子たちは、自ずと同じような境遇にある同世代とつるんだりして、地域の不良扱いされながらも、何とか自分たちだけでやっていこうとします。

だけど、盗めない子は、みんなが「お腹すいちゃってどうしよう。なんか盗まねえ?」という話をしたとき、そのことを大人や警察にチクっちゃうこともある。で、みんなから袋叩きにされることもあるし、奴隷的な使いっパシリの立場に固定されることも。

少年補導の現場では本当に典型的な虞犯(ぐはん)で累犯な子たちですが、盗める子たちも本来は矯正教育以前に児童福祉の対象でしょう。盗めない子は、本来障害に対して福祉や療育の対象であるはずの子。
けれどこうした子たちを社会で差別し排除してきた歴史は、戦後の戦災孤児の時代から変わっていない。身も蓋もない話ですが、それが現実です。

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