東大出身の先生の説明が「わかりにくい」理由 「急行」と「各駅停車」の違い
2019年03月27日 公開 2024年12月16日 更新
<<元カリスマ予備校講師の犬塚壮志氏は、人気講師であり続けるためにまず生徒に理解してもらうための「説明」の仕方を模索していた。その過程で高学歴の講師の講義が「わかりにくい」とこぼす生徒が多くいたことに気がついた
知的レベルの高い講師が一定のレベルに統一している講義をしているにもかかわらず、生徒に伝わらない理由は何か。賢いからこそ陷るワナがそこにあるという。>>
生徒たちを悩ませた、高学歴講師の「説明」
「あの先生、東大出身のはずなのに、説明が全然よくわからないんですけど…」
私の予備校時代に、生徒から受けた相談の1つです。私が以前勤めていた予備校は、東大、早慶大をはじめとする大学や大学院を卒業されたいわゆる高学歴の方が多く在籍されていたのですが、生徒からのこの手の相談は非常に多かったのです。
もちろんハイレベルな受験指導を行うプロフェッショナル集団ですので、専門用語など難解なワードも相手にしっかり理解させる解説力は当然あります。
ただ、それでも生徒からしたら講師の説明は「わからない」が出てきてしまうのです。この原因は一体なんなんでしょうか?
賢いからこそ「論理の飛躍」が起こってしまう
生徒の相談を聞くうちに、賢くて頭の回転が早い人ほど陥る「説明」のある共通点を見つけました。
それが、「論理の飛躍」です。
正確に言うと、「聴き手にとって論理が飛んでるように思える」です。どういうことかというと、いわゆる「風が吹けば桶屋が儲かる」の説明です。
「風が吹く」ことと、「桶屋が儲かる」こととの間には、一見関係性がないように思えますよね?聴き手にとっては、つまり、論理が飛んでいるように思えてしまうのです。
そもそも、この「論理」とは、何か?シンプルに言うと、2つの事柄の「つながり」です。つまり、「論理的な説明」とは、話していることの「つながりが明確」だということです。
例えば、大学入試で出題されたテーマでもあるのですが、「台風が接近すると、水は100℃より低い温度で沸騰する」という説明があったとします。
この説明は、わかる人にはわかるかもしれませんが、人によっては「わかりにくい説明」になってしまう可能性もあります。
「台風が接近する」(Aとします)ことと、「水が100℃より低い温度で沸騰する」(Cとします)こととの関係性が見えにくいのです。
ここに、「台風が近づくと、気圧が下がり、気圧の低いところでは、水は100℃より低い温度で沸騰する」のように、「気圧が下がる」(Bとします)を間に入れるとわかりやすい説明になるのです。
つまり、いきなり「A→C」と説明されても、「B」が抜けていると、聴き手側でその間を埋める作業をしなくてはなりません。
そのため、「つながり」を把握するという作業自体が、聴き手の知識や理解度に委ねられてしまいます。結果、聴き手によっては、理解度にブレが生じてしまうのです。