丁寧に暮らしたい。でも、物理的な時間はどこにある?
花瓶に花を活ける。植木に水をやる。
3月には雛人形を、5月には兜を飾って、クリスマスにはツリーを飾る。お正月には玄関先にしめ縄を掲げて、「あけましておめでとう」と言う。
朝、子どもを保育園へ連れていくとき、「早く靴を履きなさい!」と、焦って叱ることもありません。雪が積もっていたら、「わぁ、ちょっと遊んでいこか!」と、小さな雪だるまをつくって、雪合戦をする。
なに気ない毎日を丁寧に生きられる心の余裕─。
「丁寧に暮らしたい」「毎日を大切に生きたい」という言葉を、よく耳にします。けれどもその願いは、そもそも物理的に時間を確保しなければ、実現不可能です。
そして残念ながら、日本に住む多くの人が、その時間すら持てず、日々の仕事に追い立てられている……なんて理不尽なことでしょう。「みんなそうしているから、しかたない」そんなふうにあきらめていいのでしょうか。
道端に咲く花を、美しいと思える。庭の落ち葉を拾って、手入れする。一瞬でも見逃すことのできない、子どもの成長をそばに感じられる。そんな日常を取り戻してほしい。
心の余裕と時間は、ベーシックインカムより前に人生において保障されるべきものだ、と思うのです。
働き方改革が叫ばれる何年も前に働き方を変えた
仕事は本来、人生を豊かにするためにあるもの。仕事だけが人生ではないはずです。ですから佰食屋の従業員にも、仕事をなるべく早く終えて、それぞれ思い思いの時間を過ごしてほしい、と考えています。
これは、佰食屋の従業員からもらった実際の言葉です。
・「佰食屋に入社して初めて、子どもと一緒にお風呂に入れるようになった」
・「18時からはじまるバレーボールのサークルに参加している」
・「帰宅が早すぎて、本当に会社に行っているの? と奥さんに不思議がられた」
これらは、飲食業界で働く人にとっては、驚くべきことです。これまで「しょうがない」と思われてきたことを、変えていきたい。
そうやって、2012年のオープン時から、自分たちが働きたいと思える会社のあり方を追求してきました。働き方改革が叫ばれる、ずっとずっと前のことです。
次のページ
もう「頑張れ」なんて言いたくない「仕組み」で人を幸せにしたい