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「プロ棋士が人工知能に負ける日」を1996年に予言した羽生善治氏

冨島佑允(とみしまゆうすけ)

2019年08月08日 公開 2022年06月22日 更新

 

不正試合で空軍が出動

2006年のインドでは、サブロト・ムカージ記念国際レーティング・チェス・トーナメントにおいて、ウマカント・サルマがBluetoothによる通信機を帽子に隠して参加し、コンピューター解析を行う共犯者からの指示を受けてプレイしていました。主催者側は、彼の対戦成績がこれまでの履歴に比べ不自然に良いことに気付きます。

また、複数の参加者から、サルマの指し手がコンピューター・プログラムの推奨と全く同じであるという報告を受けました。7回戦目、ついにインド空軍が調査に乗り出し、金属探知機で調べた結果、隠し持っていた機材が発覚します。

より詳しい調査の後、10年間の出場停止が言い渡されました。トイレをのぞき込んだり空軍が出動したりと、そこまでやるかという感じですが、海外でのチェス人気はそれほど絶大ということでしょう。これ以外にも、毎年のように不正事件が起こっています。

また、プロによる不正の事例もいくつかあり、2015年のドバイ・オープンでは、グルジアのグランドマスター(チェスの最高位)だったガイオズ・ニガリジェが、 トイレでスマートフォンのチェス・プログラムを使用していたことが発覚しました。

重要な局面で決まってトイレへ立つのは不自然だとの抗議が対戦相手から上がり、運営側で確認したところ、便器の裏からスマホとヘッドセットが見つかったのです。グランドマスターの称号は剥奪され、大会には3年間出場禁止となりました。

 

羽生善治はAIの進化を予言していた

将棋の世界でも、コンピューターは急激に実力を増しています。

2015年に羽生善治さんは、現在のコンピューターは陸上で言えばウサイン・ボルトだが、あと数年もすればF1カーになる。そうなると、人間は人工知能と互角に戦おうとは考えなくなるだろうと述べています。

ちなみに、1996年の将棋年鑑には、「コンピューターがプロ棋士を負かす日は?来るとしたらいつ」というアンケートが載っていました。

100年は来ない、永遠に来ないといった意見も多い中で、 羽生さんは「2015年」と回答しています。やはり天才は、時代を読む力も優れているのでしょうか。

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