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生き方

定年後では遅い!「今すぐ持ち家を手放すべき」決定的な事情

成毛眞(HONZ代表)

2019年09月20日 公開 2022年11月30日 更新

 

意外に不便なバス移動

交通の便の悪さも、気になり始める。

近年、高齢ドライバーによる交通事故が相次いでいるように、歳をとると、視力が低下するし、注意力が散漫になってくるので、車の運転があやしくなってくる。

60代ならまだ良いが、70代後半〜80代に差しかかってくると、運転免許を返納したほうが良いレベルになってくる。いずれ完全自動運転車は実現するだろうが、高価な車を買える経済的余裕はないかもしれない。

そのとき、残された移動手段はバスとなる。スーパーマーケットなどに買い物に行くにしても、病院に行くにしても、副業やボランティアをするにしても、バス移動は想像以上に面倒だ。歳をとるほど、どんどん動くのがおっくうになる事態を、甘く見ないほうがいい。

夫婦2人ならそういう生活も苦ではないかもしれないが、どちらかに先立たれて一人になってしまうと、かなり厳しくなる。最低限の外出しかしなくなり、自宅で孤独死しても不思議ではない。

より一層、住む場所が重要になる。スーパーや病院が近くにない家は、やはりゴミ屋敷同然となる。

 

駅近の家も売れなくなる

「そうは言っても、体が動かなくなるのはまだ先の話。家を売るのも、もう少し高齢になってから考えればいい」と言う人もいるかもしれないが、呑気にもほどがある。ボヤボヤしていると、家が売れなくなるからだ。

先日、不動産コンサルタントがテレビで言っていたが、新築マンションの検索トレンドワードを調べると、1年前までは「駅から8分」だったのが、2019年に入ってから「駅から7分」と1分短くなったという。

このデータが意味するのは、昨年までは駅から8分以内のマンションなら売れたのが、今年は駅から7分以内でないと売れなくなったということ。

たかが1分と思うなかれ。わずか1年のあいだに、さまざまな駅周辺の物件が、軒並み10%以上、売れなくなってしまったのだ。ものすごい勢いで、売れる可能性のある物件が限られてきているのである。

さらに、東京オリンピックが終わる2020年以降は、少子高齢化の影響も加わり、確実に不動産が売れなくなる。条件の悪い物件は大きく値下がりする。売りたくても買い手が見つからないし、売れたとしても買い叩かれるだろう。駅から10分程度の物件すら、売りたくても売れない。駅から徒歩圏外の郊外の住宅など、問題外だ。

東京オリンピック選手村の跡地にできる高層マンション街区「HARUMI FLAG(晴海フラッグ)」も大々的に宣伝しているが、最寄りの勝どき駅(中央区)まで徒歩16〜21分の距離ともなれば、アクセス面で不安が残る。BRT(バス高速運送システム)で都心と結ぶ予定だが、使い勝手の良さはできてみないとわからない。

信頼できる大手デベロッパーが手掛けるマンションであっても、「駅から○分」という表示に注意し、できたら実際に歩いて計測するのが望ましい。

そう考えると、郊外の広い家に住んでいる定年前の夫婦は、東京オリンピックの前に、すみやかに家を売ったほうがいいとわかるだろう。いまこそ、最大の捨て時なのである。

そして、楽しい余生を送るためには、駅や商店街、スーパーなどから近い、1LDK程度の小さな家やマンションに住み替えるのが得策だ。前述したような問題はほとんどクリアになる。

私のおすすめは、都内なら青物横丁や戸越銀座、北千住、などだ。歩いて賑やかな場所に行く。孤独からも解放されて一石二鳥だ。

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