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社会

離職率28%の超ブラック企業が背負った「十字架」

山田理(サイボウズ株式会社取締役副社長 兼 サイボウズUS社長)

2019年11月11日 公開 2022年08月09日 更新

 

成長とうらはらに次々と流出する社員

2005年、サイボウズに転機が訪れます。

創業からずっと社長を務めてきた高須賀さんが「新しいことを始めたい」と、サイボウズを去ることになりました。

けれども、会社には残される社員がいます。やるべきことはまだまだあります。彼を引き継いで社長を務めることになったのが、現社長の青野でした。

社長就任後、手始めに仕掛けたのが、M&Aです。事業成長の伸び悩みを他企業の買収でカバーしよう、という戦略でした。

1年半ほどの間に9社も買収しました。300名ほどだった社員数は連結で一気に800名ほどになり、売上も30億円から連結で120億円規模に、時価総額も約300億円から一気に1200億円ほどになりました。

外から見れば、売上は上がり、株価は上がり、組織も大きくなりました。成果至上主義を前提にすれば「大成功」です。

けれどもその実、社員にはこう受け取られていました。

「見たことも聞いたこともない会社がグループ会社になる」「何をやっている会社かもわからないし、なんでその会社をサイボウズが買収したのかわからない」

……もはや、カオスです。

すでにバラバラになっていたサイボウズというチームが、決定的に求心力を失うのに、そう時間はかかりませんでした。

どんどん社員が会社から離れていきます。一人、また一人と辞めていき、2週間に一度は送別会を行うようになりました。

あげく、買収した子会社もうまくいかず、赤字を出し、買収すればするほど利益が削られていく。二度連続で決算の下方修正を余儀なくされ、株価も大暴落。新規事業を立ち上げる余力もモチベーションも削がれ、もはや会社としての一体感はなくなりました。

会社って、何だろう。何のためにあるんだろう……?

そんな状況にまで行き着いてしまったのです。

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業績は問題の「隠れ蓑」だが、頭打ちになったらどうするのか?

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