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社会

離職率28%の超ブラック企業が背負った「十字架」

山田理(サイボウズ株式会社取締役副社長 兼 サイボウズUS社長)

2019年11月11日 公開 2022年08月09日 更新

 

業績は問題の「隠れ蓑」だが、頭打ちになったらどうするのか?

業績が頭打ちになると、それまでに生まれた歪みや鬱憤が、まるで逆噴射するように顕在化していきます。

買収した子会社の業績が芳しくない。株価が下落して、ストックオプション(従業員の自社株買い)がインセンティブとして機能しなくなる。頑張っても頑張っても業績が上向かない。当然、社員たちはボーナスも得られず、思うように報酬を得られなくなる……。

すると、もう社員たちがこの会社に所属する理由はなくなります。人が次々に離れていきます。

折しも、2006年1月には「ライブドアショック」と呼ばれる株の暴落が起き、IT関連株は軒並み大打撃を受けました。

サイボウズも例外ではありません。わたしは子会社の社長という立場で、なぜ赤字になってしまったのか、業績を回復させる見込みはあるのか、そうでなければコストを削減して、すこしでも利益を確保する方策はないのか。「鬼の理詰め」で事業に取り組む部長たちを追い詰めました。

いわゆる「リストラ」です。

事業成長が踊り場に達したところで、「このままのやり方では限界なのかもしれない」そんな疑問がすこしずつ首をもたげてきました。

「サイボウズの成長のため」という大義名分の下、メンバーが不満をぶつけて辞めていったり、病気になってしまったり、ある意味「会社の犠牲」になりつつある状況を、見て見ぬ振りをするわけにはいかなくなりました。

そして、決定的な出来事が起こりました。

子会社の社長としてリストラを行っていたとき、ある社員が心身の不調を訴え、退職することになりました。そしてその1年後、一人きりで亡くなっていたことがわかったのです……。

「成果を上げる」ことは、それだけお客様に求められ、感謝されることだと、信じていた。けれども、その「成果を上げる」力となる社員が、どう働きたいのか、どう生きたいのか。その視点がすっぽりと抜け落ちてしまっていた。

結末は、最悪で、不幸で……あまりに残酷でした。わたしは、彼を追い詰めたという「十字架」を背負って、一生生きていかねばならなくなりました。

何の言い訳もできないくらい、当時のサイボウズは、紛れもなくむちゃくちゃなブラック企業でした。

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会社の成果至上主義から、社員の働きやすさ至上主義へ

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