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日本が2700万ドルを投資する“イスラエル事業”の実態

真田幸光(愛知淑徳大学教授)

2019年12月25日 公開 2022年07月08日 更新

日本が2700万ドルを投資する“イスラエル事業”の実態

国内外金融機関でのキャリアからグローバルビジネスに精通し、世界各国に独自の情報ネットワークを持つ真田幸光氏(愛知淑徳大教授)。自身のオンラインサロンでも、そのネットワークから得られた情報を独自の視点で読み解き、わかりやすい語り口で発信し、好評を博している。

同氏が情報を分析する際に大切にしているのは、「実際に現地を見て、体感して伝える」ということ。そのために、注目している地域には積極的に足を運ぶようにしているという。

2019年夏に、訪れた地域は「イスラエル」。そこでは、今どんな変化が生まれ、世界に影響を与えているのか。本稿では、真田氏がオンラインサロンにて語った“イスラエルの今”についてのレポートを一部抜粋して紹介する。

※本記事は真田幸光オンラインサロン「経済新聞が伝えない世界情勢の深相~真田が現代の戦国絵図を読む~」内で公開された内容より一部を抜粋・編集したものです。

 

日本が2700万ドルを投資する事業が進行中!

イスラエルでの滞在4日目。ナザレの朝――まだ真っ暗な中、モスクから流れてくるコーランを聞きながら、4日目が始まりました。

イエス・キリスト生育の地ナザレにて、受胎告知教会、聖ヨセフ教会などを見学後、死海に向かいます。ナザレでは、巡礼の人たちとたくさんすれ違います。

死海に向かう途中、ヨルダン川西岸地区にある世界最古の町と言われるエリコに入り、JICAプロジェクトを視察しました。

安倍首相、元外務大臣の河野氏も視察をされた、パレスチナ難民も多い推定人口約10,000人の町・エリコのJICAプロジェクト。現地の所長からうかがった概要は以下の通りです。

●プロジェクト名は「エリコ農産加工団地(JAIP)」。「平和と繁栄の回廊」構想といわれる、日本、パレスチナ、イスラエル、ヨルダンの地域協力により「パレスチナの経済的自立」を促すもの。2006年から開始された、中長期プロジェクトの旗艦事業となっている。

●現状の進捗は「フェーズ1」。11.5haが工業団地として造成され、すでにパレスチナ民間企業15社(オリーブ葉エキスサプリ製造、梱包用緩衝材、ウェットティッシュ、ミネラルウォーター、石鹸、冷凍ポテト、再生紙等々の製造業)が操業、その他の13社が入居契約済となっている。

●現在は、約220人の雇用を生んでいるが、今後、約50haの造成を予定する「フェーズ2」に入ると、約3,400人の雇用を生む見通しで、それがうまくいけば、更に50haの造成を予定する「フェーズ3」に入る予定である。

●日本はこの事業に約2700万米ドルの投資を実施。JICAはプロジェクト成功に導く努力を惜しまず、ハードの工業団地建設に留まらず、進出企業の経営アドバイス、ロジスティクス、販路開拓などにまで関与している。日本の国際協力プロジェクトのトッププロジェクトに相応しい活動が行われていることを目の当たりにした。

●JICAとしては、本プロジェクトの今後の課題として「企業の入居、稼動促進」「上水、電力の安定供給の確保」「国外マーケットへの物流ルートの整備」をあげている。特に物流ルートについては、「イスラエル、ヨルダンとの専用道路建設、国境通関手続き円滑化促進などに注力したい」と語っていた。

●JICAは今後、イスラエル企業とのコラボレーションを意識したIOTビジネス関連分野の操業支援などにプロジェクトの質のレベルを高めていきたいと考えているとのこと。

この日は、プロジェクトの入居企業の社長から直接説明を受けた後は、一般の人は許可なく入れない、洗礼の地カスルエルヤフドへ。その後、クムラン遺跡見学、エンボケックに入り、死海にて浮遊体験――こうして、1日を終えました。

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