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「パワハラする人は、セクハラもしがち」 仏教典が指摘する“嫌な人のパターン”

2019年12月20日 公開

鵜飼秀徳(ジャーナリスト・浄土宗僧侶)

 

非難されない人はいない

また、お釈迦さまは、パワハラの気のある弟子をこのように諫めていました。

「アトゥラよ、これは昔にも言うことであり、いまに始まることでもない。沈黙している者も非難され、多くを語る者も非難され、すこしく語る者も非難される。世に非難されない者はいない」
(法句経第17章 227)―『ブッダの真理のことば 感興のことば』 中村元訳

詳しく解説しましょう。

お釈迦さまの弟子にアトゥラ信者という、相手を思いやれない者がいました。彼はある時、教えを授かりに、「禅定第一」と呼ばれたレーヴァタ(離婆多)長老のところに向かいました。

しかし、レーヴァタ長老は静かに瞑想をするだけで、何も語ろうとしませんでした。ムカッとしたアトゥラ信者はレーヴァタ長老を罵ののしり、去っていきました。

次にアトゥラ信者が向かったのは、サーリプッタ(舎利弗)長老のところでした。サーリプッタ長老は「智慧第一」と呼ばれ、お釈迦さまから最も信頼されていた人物です。

サーリプッタ長老はアトゥラ信者に理解できないような難解な説法を始めました。すると、また彼は怒って去っていきました。

次にアトゥラ信者が向かったのがアーナンダ(阿難)長老のところでした。長老は「多聞第一」と呼ばれ、お釈迦さまのとくに近くで仕えた人物で知られています。

アーナンダ長老は子供に理解させるように、やさしく説法をしました。しかし、アトゥラ信者は「物足りない」と腹を立ててしまいました。

そして、最後に向かったのがお釈迦さま(ブッダ)のところでした。お釈迦さまは、上記のようにアトゥラ信者を諭した上で、「愚かな者たちの非難や賞賛には際限がない」と嘆きました。

お釈迦さまの時代も、今も、組織の中での人間関係は似たようなものだったようです。常に自分を正当化し、相手の非をなじるような者に、己の愚かさを気づかせ、改心させることは至難の業です。

 

勝利者が勝ち取るものは敵意

「伝説の経営者」とも呼ばれた米国ゼネラル・エレクトリック(GE)社を率いたジャック・ウェルチ氏は、

「自信のある人間は異論を歓迎し、素直に耳を傾ける勇気を持つ」

との名言を残しています。

裏を返せば、自分の思い通りにいかない相手を攻撃するような者は、「自分に自信のない臆病者」ということかもしれません。

したがってパワハラやセクハラの原因が、自分に自信の持てない者の「嫉妬」に由来することはよくあることです。お釈迦さまはこのように言っています。

「勝利者が勝ち取るものは敵意である。敗れた人は苦しんで萎縮する。心穏やかな人は、勝敗を捨てて安らかに過ごす」
(法句経第15章 5)―『原訳「法句経」一日一話』アルボムッレ・スマナサーラ著

勝利者が勝ち取るものは敵意―。悲しいかな、これは人間世界の真理のようです。たとえば、誠実に仕事に向き合う若い社員がいたとします。その彼が成果を出し、プロジェクトのリーダーになり、順調に出世の階段を上っていき、将来を嘱望されるようになりました。

しかし、先輩社員や同期の中には、妬んだり嫉んだりする者も少なからずいるものです。嫉妬に支配された者は、強い立場の会社幹部にすり寄り、相手を蹴落とそうと必死になります。

私も20年の会社員人生の中で、しばしばそのような局面を見てきました。たとえばAさんは人柄も申し分なく、部下や取引先からも信頼される優秀な人材でした。

しかしある時、これまでのキャリアを否定するような無関係の部署に、不自然に異動になりました。Aさんはとても正義感が強く、常に部下を守る姿勢を貫いていましたが、それが逆に上役にとっては楯突いたように見え、Aさんを排除したのです。

Aさんは、この人事で苦しみ、うつに近い状態になり、最終的には会社を去っていきました。お釈迦さまが、「心穏やかな人は、勝敗を捨てて安らかに過ごす」と述べたように、組織の論理から離れたAさんは現在、フリーになって、精力的に活動されています。

会社組織に振り回され、上司から理不尽な要求やパワハラを受ける。こうしたことは今に始まったことではないのです。

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