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不倫はやはり不謹慎!?…戦時中に上演が禁止された「落語ネタ」

立川談慶(落語家)

2020年02月07日 公開

 

「紙入れ」

小間物屋(くしやかんざしなどの婦人の装飾品、日用品などを扱う商店)で働く新吉が、得意先の商家の新造(他人の妻の敬称)から、「今夜は旦那が帰らないから遊びに来 てほしい」と手紙をもらいます。

新吉は迷います。自分を贔屓にしてくれ、世話をしてくれている旦那には悪い気もしましたが、迷った末に出かけて行きます。

新造は新吉に酒を勧め、「今日は 泊まってくれ」と言います。 断る新吉に、新造は「どうしても帰ると言うなら、留守の間に新吉が言い寄って きたと旦那に告げ口をする」と脅します。

困ってがぶ飲みし、悪酔した新吉は隣の間に敷いてある布団に入ります。直後に、長襦袢(ながじゅばん)(和服の下着)姿になった新造も布団へ入って来ました。

そのとき、表の戸を叩く音がします。何と帰らぬはずの旦那が帰って来たのです。パニックに陥った新吉を尻目に、新造は落ち着いて新吉を裏口から逃がします。

家に駆け戻った新吉は、新造の元に紙入れ(財布)を忘れたことに気付きます。それは旦那にも見せたことのある紙入れで、中には新造からもらった手紙が入っていました。旦那に不倫がバレたのではないかと、新吉はまんじりともせず夜を明 かします。

翌朝、新吉は恐る恐る旦那の家に出かけます。新吉の浮かぬ顔を見て、旦那は理由を尋ねます。

そこで「他人の女房とデキた」と知り、諭し始めます。 新吉は、不倫の相手が、当の旦那の新造である点を隠しつつ、これまでの顛末を洗いざらい打ち明けます。

「手紙のはさんである紙入れを忘れたのですが、そこの旦那に見つかったかもしれないんです......」

そこへ新造が現れます。

「おはよう新さん、気が小さいのねえ。それは大丈夫と思うわ。だって旦那の留守に若い人を引っ張り込んで楽しもうとするくらいだから、抜かりはないはずでしょう。

新さんを逃がした後、不倫の証拠になりそうなものはきちんと確認して、紙入れがあれば旦那にわからないようにしまってありますよ」 旦那も同意します。

「そりゃあそうだ。よしんば紙入れが見つかったところで、自分の女房を取られるような男だ。そこまでは気がつかねえだろう」

(※次のように落とす落語家もいます)

新造が「その間抜けな旦那の顔を見たいものだわ」と言うと、旦那が顔を突き出します。

「おおかた、こんな顔じゃねえのか」

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現代風に言うと「不倫相手を自宅に招いて、配偶者にバレた」というストーリーです。 「若いセールスマンと、取引先の妻がデキてしまった」という噺です。

今も昔も、世間からなかなかなくならない不倫。「欲望に負けることもあるのが人間だ」という真理を、これらの噺はおおらかに教えてくれます。

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