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「がんは、必ず死ぬ病気ではなくなりつつある」研究者が語る"治療の最先端”

一石英一郎(いちいし・えいいちろう)、鬼塚忠(作家エージェント)

2020年03月13日 公開 2022年02月02日 更新

 

がん研究者の長年の夢「遺伝子治療」

(鬼塚)つまりは、すべての人が病気の治療と予防のために自らの遺伝子と向き合う時代がやってきたというわけですね。すごい時代になりましたね。

(一石)はい。まさに、オーダーメイドの医療という時代になります。そんな時代だからこそ、治療を受ける側である患者も遺伝子の基本的な仕組み、がんについてある程度の知識を持つ必要があります。

そのうえで、がんとはどういう病気なのか、遺伝子や細胞はどのように変化することでがんになるのかを学ばなければなりません。

(鬼塚)つまり、がんは遺伝子の病気といえるのでしょうか。そうなら、その遺伝子を治せば病気は治るのではないかとふつう考えますけどどうでしょうか?

(一石)その通りです。遺伝子を治せば病気は治ります。それは遺伝子治療と呼ばれ、がん研究者の長年の夢です。

1970年代から 本格的に始まった研究は試行錯誤を繰り返し、現在では遺伝子治療ががんを含む一部の病気に対して行われるようになっています。

とくに従来の対症療法では根治できなかった遺伝病やがんなどの根本的な治療法になる可能性があるため、将来にわたって大きな期待がかかっています。

(鬼塚)大きな可能性を持っていますね。具体的に遺伝子治療とはどのようなものなのでしょうか。

(一石)簡単に言うと遺伝的欠陥を修正するために、細胞に正常なDNAを直接挿入する治療のことです。

現在は、傷ついた遺伝子や機能が失われた遺伝子の代わりに正常な遺伝子を導入するやり方と、病気の原因となる有害な遺伝子の働きを抑えるやり方の2通りが行われています。

細胞内に遺伝子を導入する方法には2種類あり、患者の細胞を取り出して体外で目的遺伝子を導入した後、再移植する方法と、患部に直接遺伝子を導入する方法とがあります。

ただし、現在の遺伝子治療で勘違いしてほしくないのは、遺伝子そのものを根本的に治療し、次世代へも影響を与える技術ではないことです。

技術的には可能ですが、遺伝子治療はあくまで患者個人の世代にとどまるように、体細胞に特定の遺伝子断片を導入することによって病気を治す方法がとられています。

それは、まだ遺伝子治療に関する知識が十分蓄えられているわけではなく、子孫に伝わるような新たな遺伝病を発症させないためです。

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