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社会

叩く、行く手を遮る…AI研究者を悩ませる「ロボットいじめ」

大澤正彦(AI研究者)

2020年03月20日 公開 2022年12月26日 更新

叩く、行く手を遮る…AI研究者を悩ませる「ロボットいじめ」

子供の頃からの夢「ドラえもんをつくる」ために、神経科学や認知科学を武器に本気で最新のAI開発に取り組む、新進気鋭の研究者である大澤正彦氏。

単なるロボットとしてではなく、人とのかかわりや人間がもつ感情や心に注目し、「人間」を徹底的に研究し、最新のAIやHAIをもとに、各分野のエキスパートや仲間の力を借りて、「ミニドラ」づくりに取り組んでいる。

本稿では、そんな大澤氏の著書『ドラえもんを本気でつくる』より、人と共生していけるロボットのあり方を探った一節を紹介する。

※本稿は大澤正彦著『ドラえもんを本気でつくる』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。

 

ディープラーニングは、人とかかわることが苦手

修士一年のころ、慶應義塾大学の今井倫太(みちた)先生の講演を聴く機会があり、心に突き刺さりました。

演題は、「インタラクションと知能」。今井先生は私と同じ学科の先生だったので、かつて研究室を見学に行ったこともありましたが、おもしろいロボットをつくって人がどう思うかを調べている、くらいの認識でした。

たとえば、今井先生の研究室では、遠隔操作ロボットの研究が盛んに行われていました。当時、私は、その研究を便利なツールづくりとしか認識していませんでした。

しかし、この講演で、遠隔操作する人の存在によってロボットに人と同じだけの社会的な価値が与えられることを知り、イメージがガラリと変わりました。

外見はまったく同じロボットでも、内部に人を感じるだけで、もはやロボットは人のようになれるのです。

「人は人とのかかわりのなかで人になっていく。知能は決して脳だけがあればできるものではない。脳は体と一緒にあるから、環境と一緒にあるから、知能として成り立っている。そして、人間の本質的な知能のほとんどは、他者と一緒に自己があるから成り立っている」。

そう考えると、いまのAIの研究のように、知能の部分にだけ注目するのではなく、人と人とがかかわりあう関係全体をとらえて研究していかなければならないし、ほんとうの意味で「人のようなロボットをつくる」のであれば、人とロボットがかかわりあう関係全体を設計していく必要性を痛感したのです。

ちなみに、この講演がきっかけで、現在は今井先生のもとで研究に取り組んでいます。

 

ディープラーニングには膨大なデータが必要

ディープラーニングには大きな課題があります。

ディープラーニングは、大量のデータを使ってコンピュータに学習させると、精度の高い画像認識や自然言語ができるようになりますが、逆に言うと、大量のデータと大量の計算機資源を集めなければなりません。学習のために大量の時間も要します。

そんなディープラーニングと、人間はうまくかかわることができるのでしょうか。

人間がコンピュータに100万件のデータを教え込むようなことはとてもできません。24時間寝ないで、1カ月間、コンピュータに教えつづけても、100万件のデータを教えられるかどうかはわかりません。

でも、コンピュータが自動的に学習すれば、1,000万件、1億件のデータを学習することができます。

しかし、人間が介入すると、投入されるデータ量はかなり減ってしまいます。人間とかかわらないほうが、大量のデータを処理できて精度が上がるのがディープラーニングの技術です。

つまり、ディープラーニングは、人とかかわらないほうが性能が上がるという性質をもっています。言い換えれば、ディープラーニングだけでは、人との接点を消す方向に進んでいくかもしれません。

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人と接することを得意とするディープラーニングの開発がブレイクスルーとなる

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