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「熱は38度以上」「のどが痛い」の情報から診断が可能だった80年代のAI ただし…

大澤正彦(AI研究者)

2020年03月02日 公開 2020年03月23日 更新

「熱は38度以上」「のどが痛い」の情報から診断が可能だった80年代のAI ただし…


(撮影:小澤健祐)

子供の頃からの夢「ドラえもんをつくる」ために、神経科学や認知科学を武器に本気で最新のAI開発に取り組む、新進気鋭の研究者である大澤正彦氏。

単なるロボットとしてではなく、人とのかかわりや人間がもつ感情や心に注目し、「人間」を徹底的に研究し、最新のAIやHAIをもとに、各分野のエキスパートや仲間の力を借りて、「ミニドラ」づくりに取り組んでいる。

しかしながらその鍵となる「AI」は、近年になって突然に現れたものではなく、その発展には歴史がある。本稿では、大澤氏の著書『ドラえもんを本気でつくる』より、ミニドラ完成に欠かせないAI発展の歴史に言及した一節を紹介する。

※本稿は大澤正彦著『ドラえもんを本気でつくる』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。

 

コンピュータの誕生で1回目のAIブームが起こった

現在まで「AI」という名の下に進められてきた研究で実現したことや、いまだ課題として残されていることについて整理しておきます。

AIブームは、私が生まれる前のことも含めると、これまでに三回あったとされており、いまが3回目のブームといわれています。

一回目のブームは、1950〜60年代です。

1950〜60年代には、コンピュータというものができて、世の中に広がっていきました。コンピュータは「人の知性を代替するものになるのでは?」という期待が高まります。

コンピュータという新しい道具の誕生で、ブームは非常に盛り上がりましたが、結局は、遊びのプログラム程度しかつくることができませんでした。

アルゴリズムさえしっかりと記述すれば自動化はできるのだけれども、そのアルゴリズムはあくまでも人間が考えたもので、コンピュータは人間がつくったアルゴリズムどおりに動くだけでした。

結局、「知能があるのは人間側であって、コンピュータは指示どおり動いているだけじゃないか」という結論になり、コンピュータはAIにならないという失望感が広がって、ブームは終わりました。

 

知識をひたすら書き込んだ2回目のAIブーム

2回目のAIブームは、1980年代です。

「知識をひたすらコンピュータに入れつづければ、人並みの知性を再現できるのではないか」という期待が高まり、当時、「エキスパートシステム」というものが流行しました。

エキスパートシステムは、コンピュータに大量の知識を入れれば、人間以上の能力を発揮するのではないかという仮説に基づいてつくられたシステムです。

当時、実現した一例として、医学知識をコンピュータに詰め込むことで生まれた、病気の診断システムがあります。医師が問診をするようにコンピュータが次々と質問をしていき、患者さんがそれに答えると病名が診断できるというものです。

実際につくってみると、専門医にはおよばないものの、研修医よりはあたるといったレベルにまで到達したそうです。

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「アキネイター」は第2次ブームのAI技術が活用されている

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