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御社のホームページ制作費、実は割高? “ネットの相場”にはびこる「情報格差」の実態

竹内謙礼(有限会社いろは代表)

2020年03月25日 公開 2023年11月02日 更新

 

戦略的にホームページを作れる人は、都内でも30人だけ?

ひと昔前であれば、ネットを少し知っているだけで、かんたんにネットビジネスを始めることができた。しかし、最近は"少し"ネットを知っているだけでは、まったく歯が立たなくなってきている。

フェイスブックやインスタグラムなどのSNSを活用してファン顧客を作らなくてはいけないし、動画を使ったコンテンツも充実させなくてはいけない。

さらに、PCサイトだけではなく、スマホサイトも作り込まなくてはいけないので、ホームページの制作費は昔に比べて2倍、3倍と跳ね上がってしまった。SEOは以前にも増して手間と時間がかかるようになり、リスティング広告も個人で運用するには手に負えないほど仕事量が増えてしまっている。

ネットを取り巻く環境は、次から次へと新しい情報やツールが増えているために、すべてにおいて「知っている人」になることが難しくなってきている。

ホームページを1つ作るにしても、スマホでのユーザビリティ(使いやすさ)も考えなくてはいけないし、動画の撮影ノウハウも持ち合わせなくてはいけない。

また、集客に関しても、従来まではSEOとリスティング広告さえ押さえておけばなんとかなったものの、そこにSNSが絡んでくると、戦略はさらに複雑になってしまう。

ネット通販を展開しようものなら楽天市場、アマゾン、ヤフーショッピングなどの各モールの情報も押さえなくてはいけない。そのため、すべてのネット関連の情報を万能に知ることは、ほぼ不可能に近くなっている。

以前、ネット系のコンサルタントが集まる勉強会で、「東京都内にホームページをディレクションできる人間は30人ぐらいしかいないんじゃないか」という話が冗談交じりで飛び出したことがあった。

「これだけ世の中にホームページ制作会社があるのに、30人しかいないというのはあまりにも言い過ぎだ」とみんなで笑い出したが、冷静に考えれば、SNSもSEOもリスティング広告も動画もすべて理解したうえでホームページの戦略を考えられるディレクターなどいるはずがない。

また、仮にネット業界の仕組みをすべて理解しているディレクターがいたとしても、ホームページのディレクションは想像以上に面倒くさい仕事のため、スキルが高い人になればなるほどやりたがらない。

クライアントの商品やサービスも理解しなくてはいけないし、ホームページに載せてほしい情報を理解するために、相手とのコミュニケーションも深めなければいけない。

また、依頼主はネットにくわしいわけではないので理解してもらうために時間をかけて説明しなくてはいけないし、ネットを理解していない人たちの言い分を会社に戻ってデザイナーやシステムエンジニアに説明しなくてはいけないので、板挟みのようなストレスを数カ月間抱えることになる。

 

「わかったふり」の業者が蔓延 「安い報酬」のリスク

ネット業界の仕組みをすべて理解しているような優秀な人材は、そもそも「ホームページを制作する」というストレスのかかる仕事をやらない。それよりも、もっと楽に稼げる仕事はネット業界に無数に存在している。

SEOやリスティング広告を使ってEコマース事業を始めてもいいし、SNS専門のコンテンツ制作会社を立ち上げてもいい。

ありとあらゆるノウハウを使って、ネットの「知らない人」に気を遣う仕事をするぐらいであれば、ネットを「知っている人」たちだけを集めて、専門のジャンルに特化した仕事をしたほうが効率よくお金を稼ぐことができる。

損得勘定ができる優秀な人間であれば、「ホームページを制作する」という非効率な仕事は選ばないはずだ。

そうなると、本当にネットのことをすべて理解したうえでホームページを制作しているような人間は、好きでその仕事をやっている"変わり者"ということになる。東京都内にそんな変人は30人ぐらいしかいないという仮説は、あながち冗談めいた話ではなくなってしまう。

まして東京はネット関連の仕事も多く、給与も高い。わざわざホームページを作る仕事などしなくても、企業でネット戦略を取り仕切るポジションで仕事をしたり、自分で新しいネットビジネスを立ち上げて起業したり、能力が高ければいくらでもお金儲けのチャンスをつかむことができる。ホームページ制作などという、ペルシャ絨毯を1年かけて作る職人のような仕事をやる必要はないのだ。

ネット業界の仕組みが複雑になればなるほど、それに対応できる人材は少なくなる。仮にすべてを「知っている人」がいたとしても、その人材はネット業界でも貴重な存在になるので、高い報酬を得て仕事をしている可能性が高い。

そうなると、小さな会社が依頼できる予算で仕事を引き受けてくれるような人は、すべてを「知っている」という可能性が低く、つまるところ、安い報酬では「わかっているつもり」「わかったふり」をしてしまうホームページ制作業者が参入しやすくなり、さらに相場がわかりにくくなってしまうのである。

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