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社会

子どもの学力を左右してしまう、親の経済力とは別の「重要な要素」

中野信子(脳科学者)、鬼塚忠(作家エージェンシー代表)

2020年04月09日 公開 2023年10月13日 更新

 

子の学力と家庭の経済環境の関係から考える「心の環境」

中野信子さんと鬼塚忠さん

(鬼塚)大人になって人間関係を作るには、子どもの頃の親の深い愛情が必要というわけですね。

(中野)そうです。さらに加えると、特定の親に育てられただけではじゅうぶんとは言えません。ネグレクトや、親などの養育者の心の病が原因でもこのような症状は起こり得ます。

望まない妊娠、若すぎる年齢での妊娠、貧困、望まないシングルマザー、祖父母を含めたほかの養育協力者の不在、親が薬物中毒であることによっても起こります。

これらの要因は世代を超えて連鎖していくことが数多あり、これを世代間伝達といいます。

(鬼塚)世代間伝達。また学術的な言葉が出てきましたね。親の素養は養育によって世代を超えて伝達するということですか。

(中野)ざっくりいうとそうです。しばらく前に話題になった調査があります。子の学力と家庭の経済的環境には相関関係を示したのです。

経済的に恵まれた家庭の子はより学力が高く、成人してからの社会的地位や、経済的余裕が高いという調査結果でした。階層が固定されていくのではないかという不安が、多くの人の関心を呼んだと思います。

(鬼塚)覚えています。金持ちの子は金持ちになる。興味深い調査結果でしたね。でもこれは経済的な、いわば物理的な話ですよね。

(中野)いや、断定は出来ませんが、これは心理的環境についても同様のことが言えそうです。というのが、愛情遮断症候群の世代間伝達の問題です。

つまり、親から健全な愛情に恵まれて育った人は、成人してからも愛情を子に注ぐ能力が自然に身につくが、そうでない人は子どもに対して適切な振る舞いができないのではないかというのです。

(鬼塚)これは、愛情を持っていない親の下で育ったという自覚のある人にとって、かなりきつい話だと思いますだどうでしょう。

(中野)そう思われがちかもしれませんが、それは拙速です。なぜなら、自分自身の傷にまず勇気をもって向き合うことが、新たな未来への第一歩だからです。

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子どもの学力を左右するのは「親の○○力」?

著者紹介

中野信子(なかの・のぶこ)

脳科学者

1975年、東京都生まれ。脳科学者、医学博士、認知科学者。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。フランス国立研究所に博士研究員として勤務後、帰国。脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。現在、東日本国際大学教授。

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