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SAKEを世界に! カリスマ利酒師が仕掛ける日本酒の世界戦略



2020年04月17日 公開

八木・ボン・秀峰(名誉利酒師、米国TICレストラングループ社長)

八木・ボン・秀峰(名誉利酒師、米国TICレストラングループ社長)

今日のニューヨークにおける「日本食ブーム」の仕掛け人で、「ボン」の愛称で親しまれている八木・ボン・秀峰さん。

19歳で単身フィラデルフィアに渡り、世界を放浪した後、八木さんは1台のトラックを買いこみ、イーストビレッジで青果店を起業。紆余曲折を経ながら、寿司や蕎麦、しゃぶしゃぶ、ラーメンなど、日本食レストランを次々に開業して成功をおさめます。1996年にオープンした日本酒レストランバー「酒蔵」は、日本各地の蔵元から200種類の銘柄を集め、ニューヨーカーから絶大な人気を得ました。

そうした活躍が認められ、NPO法人FBO(飲食専門家団体連合会) およびSSI(日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会) からは「名誉唎酒師」の称号を授与。令和元年には、日米の食文化交流への貢献が認められ、秋の叙勲(旭日双光章)を受けています。

八木氏が日本酒を世界に広めるために思い描くビジネス戦略とは? 

初の著書『教養として日本酒』から、その一部をご紹介します。
 

キャッツキルとの運命的出合い

忘れもしません、2001年、NYでは悲惨なできごとが起こりました。セプテンバー・イレブンです。ワールドトレードセンターが崩壊するのを目の当たりにし、およそ3600人の犠牲者を生んだこの惨劇から、私自身、精神的に立ち直るには時間が必要でした。

その年の大晦日、私はNYシティの北に位置するキャッツキルの禅寺に、除夜の鐘を突くために出かけました。鐘の音は一つ一つが胸に染みました。静寂に包まれたキャッツキルの闇に、隅々まで響き渡るような振動に心が波動したのです。そこで酒で乾杯したのを最後に、私は断酒を決意しました。好きな酒を断つことで犠牲者に弔意を表し、自分に試練を課すことで精神的に強くなりたいと思ったのです。妻はどうせ三日坊主よ、と相手にしませんでしたが、断酒は息子が大学に入学する2011年まで、10年間続きました。

そんな決意をさせてくれたキャッツキルは、自然に溢れた美しい山岳リゾートです。NYから車で3時間ほど、なだらかな山裾は州立公園になっています。NY市民やアップステートNYに住む人たちの保養地として人気があり、夏は避暑に、秋には紅葉狩りを楽しむ人たちで賑わいます。富裕層の別荘も建っています。

ある日、キャッツキルの麓のリビングストンマナーという町で、商業物件が売りに出されました。レストランを開こうかと場所を探していた私は、迷わずこの土地と建物を購入しました。調べればキャッツキル山系の伏流水は水質に優れ、NYの水道水として送水されているほど。NYの水道水は全米でも有数の水の綺麗さを誇っています。
 

クラフトSAKEの醸造所を構想

その事実に気付いたとき、ここをレストランではなく醸造所にしようという思いが私の中に芽生えました。日本酒を世界に知ってもらうには、世界のあちこちでクラフトSAKEを造る必要があると思います。クラフトSAKEの醸造を通じて、世界の酒の愛好家に、日本酒の醸造にはいかに技と手間が必要かを知ってもらいたいと思うのです。

米、麦、ブドウなどの原料を発酵させて造る酒が醸造酒です。ビールもワインも同じ醸造酒ですが、日本酒は「並行複発酵」という複雑な発酵過程を経てできあがります。ワインなどの果実酒は、原料そのものに糖分が含まれているので、酵母を加えるだけで発酵させることができます。

ところが、日本酒やビールの原料は、米や麦といったデンプンなので、日本酒では麹の、ビールでは麦芽の酵素の働きにより、糖分に換えてから酵母によって発酵させなければなりません。ビールは、デンプンを糖分に換える工程と、その糖分を発酵させる工程を別々に行いますが、日本酒は、この工程を同時に進行させます。それが「並行複発酵」と呼ばれる醸造法で、世界に類を見ない高度な発酵技術と言われ、日本酒のまろやかな深い味わいの秘密がこの発酵法にあるのです。こうした高度な技術を身近に見ることのできる酒蔵が、各地にあったなら、日本酒への関心はもっと高まるはずです。

地元で造られるSAKEをきっかけにして、本格的日本酒への関心が深まり、日本から輸入される高級酒へ導入できればと考えるからです。実際、日本からの酒はアメリカでは高額となり、日常的に楽しめる市民はほんの一部の人たちです。日本酒へのハードルを下げる必要性も感じています。

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