男はすぐに「アドバイス」をしたがる。家で「ちょっとお腹が痛むんだけど」と言ったら、「大丈夫?」と言ってほしいのに「医者に行けば?」。会社では、大変な状況になっているのをわかってほしいのに、問題の一つひとつにすぐ指示を出してきて共感してもらえない。
でも、これは男性が悪いわけでない。一般的な「男性脳」が「女性脳」と違って、「問題解決」を目指す脳になっているためなのだ。では、男性にはどんなふうに話しかければいいのだろうか。『コミュニケーション・ストレス』の著者で、人工知能研究者の黒川伊保子氏が明快に答える。
※本稿は黒川伊保子著『コミュニケーション・ストレス』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。
男女の脳はココが違う
以前の記事(「男性がなかなか⾔えない「⼥性が⼼をひらく“ひと⾔”」)でも述べたが、私は⼈⼯知能の研究の過程で、脳が「とっさの使い⽅」によって、2種類に⼤別されることを発⾒した。
⼀つは、⼥性に多い「プロセス指向共感型」の脳。感情によって記憶を想起し、プロセスを解析することによって深い気づきを⽣み出す脳である。
もう⼀つは、男性に多い「ゴール指向問題解決型」の脳。事実を客観的に把握し、ゴールを定め、問題解決を急ぐ脳である。
この⼆つの脳の感性の違いが、さまざまな男⼥の⾏き違い、すれ違いを⽣んでいるのである。
男性脳がよく使う「事実文脈」
ゴール指向問題解決型の脳は、相手の感情に極力反応せず、アドバイスをすばやく打ち込む「事実文脈」という文脈で対話を行うことが多い。
「事実文脈」は、目の前の人を、いち早く混乱から救うための手法である。大げさに言えば、命を救うための対話である。
目の前の人が抱える問題点をいち早くつかんで、その解決策を指摘する。それが、事実文脈の掟である。そのほうが、的確に命を守れるからだ。
たとえば、腐った橋を渡ろうとする人がいたら、誰だって「その橋、渡っちゃダメ!」と叫ぶだろう。相手に共感しようとして「きみの気持ちはわかるよ、わかるけどさぁ」なんて言ってる暇はない。
もちろん、渡ろうとした人が悪いわけじゃない。悪いのは、腐った橋を放置しておく行政なのだろうが、そんなことを言っている暇はない。だから、その人が「渡ろう」とした事実を即座に否定する。その人を救うためだ。