「過労死ライン」を超える教師が6割以上…毎年5000人が休職する“学校の実態”
2020年06月26日 公開 2022年07月14日 更新
「電通事件より過酷」な長時間労働の蔓延
さらに同じように計算すると、月120時間以上残業(週65時間以上勤務、持ち帰り残業も考慮)という、過労死ラインをはるかに超えて働く教員は小学校で17.1%、中学校で40.7%にも上ります。
2016年、電通の新入社員だった高橋まつりさんの自殺が過労死認定されたことは、社会的にたいへん注目され、国の働き方改革を大きく動かしました。
では、まつりさんがどのくらい過重労働だったかはご存じでしょうか?
労基署が認定したのは月105時間の残業、弁護士が入退館ゲートのデータをもとに集計した残業は月130時間を超えることがあったと報道されています。
先ほどの120時間以上残業している人の比率を見てもわかるとおり、多くの教師が高橋まつりさんと同じか、もっと長く働かなければいけない職場にいるのです。
しかも、日本の教員の労働時間はダントツで世界ワースト1位であり、海外から見ると、アンビリーバブルなハードワークです。
学校現場も長時間労働に麻痺している
「日本の教師は残業して当たり前」。このことがもっとダイレクトにわかるデータを紹介しましょう。
図は、岐阜市立のある小学校とある中学校の時間外勤務時間のリアルなデータです(令和元年度)。ここで示されている個々人のデータを見ると、「この先生、大丈夫かな」というのが一目でわかります。
このデータからは次のことがわかります。
・時間外勤務時間が80時間はおろか、100時間を超えるような教員が一定数いる。
・常勤講師など、非正規雇用で教員採用試験を受験しようという人のなかにも、長時間労働の人はかなりいる。
・教務主任、学年主任をはじめ、主任層は特に長時間労働になる傾向が強い。
また、全国的な傾向として、小学校や中学校では休憩時間がほとんど取れていません。たとえば、横浜市の教職員の業務実態に関する調査(平成25年度)によると、小学校約5割、中学校約7割の教職員が、「休憩時間」がまったく取れていないと回答しています。
以上から、休憩時間中の業務や自宅残業も含めると、実際の残業は、上記の図に出ている数字よりも月20~40時間程度多いと推測されます。
私はここで示したデータを全国各地の校長、教頭研修などでお話しするのですが、顔を真っ青にするような人は、実はほとんどいません。聞いてみると、「それくらいはまああるだろう」という認識の様子です。ここに学校の長時間労働の問題の根深さを感じます。
もちろん、労働時間だけの問題ではありませんが(働く質やストレスも重要)、こういう人がたくさんいるのです。学校は長時間労働に麻痺してしまっている、と言わざるを得ません。