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同僚への嫉妬の感情は「仲良くなりたい本音」の裏返し



2020年07月24日 公開

石川幹人(明治大学教授)

なぜ人は嫉妬するのか?(石川幹人)

《誰かに嫉妬してしまう、何にも情熱が湧かない、すぐに後悔してしまう……よくある悩みは、実はその人が悪い訳ではありません。私たちが生き残りやすいように、先史時代から受け継いだ遺伝子に問題があったのです。本来は人類の生存に有利な反応だったのですが、現代では高度に社会が発達し遺伝情報がそのまま適応できない状況なのです。

『その悩み「9割が勘違い」 科学的に不安は消せる』の著者であり、進化心理学の第一人者である石川幹人氏が、人間に共通した人間の進化の歴史から現代人が抱える悩みを読み解きます》

※本稿は石川幹人著『その悩み「9割が勘違い」 科学的に不安は消せる』(KADOKAWA刊)より一部抜粋・編集したものです

 

人類が利己的なのに協力しあえる理由

【お悩み】成果を出す同僚を見ると、嫉妬してしまいます。
【答 え】嫉妬心は実は公平感の裏返しなのです。

まず、公平感について考えるために「協力」について知る必要があります。私たちは、自分に見返りがない場面でも誰かを助けます。よちよち歩きの幼児でさえ、大人が落としたペンを拾ってくれます。

また、表情を見ているとわかりますが、拾ってあげたことがうれしいのです。生物進化のメカニズムは利己的な競争であり、自分が生き残りやすい行動の遺伝情報が引き継がれるものでした。

にもかかわらず、人を助けて喜ぶという他人が生き残りやすい行動がなぜ進化したのでしょうか。それは、互いに助け合う集団をつくることが有利であった「狩猟採集時代の草原環境」がもたらしたのです。

草原では獲物が走り回るためなかなか仕留めるのが難しかったのですが、当時はマンモスなどの巨大な動物もいたので、いったん獲物がとれれば食べきれないほど手に入ることも多かったと推測されます。

なにしろ、肉を保存する技術もない時代です。集団の皆で思い切り食べて、脂肪に蓄えるしかなかったのです。そこで、獲物がとれたら皆で分ける傾向や、公平感が身についたのです。現代の私たちも、こうした協力体制や公平性を遺伝的に引き継いでいます。

 

協力関係が嫉妬を生む

狩猟採集時代の人類集団は100人くらいの規模だったでしょう。その中から数人のグループをいくつか結成して、それぞれ異なる方向に狩りに行きます。

狩りの成功率は低かったのですが、あるグループが成功して獲物を持ち帰れば、居住地にて皆で分け合います。失敗したグループは次は我々が獲物をとってくるぞと奮起するのです。こうして時間差のある高度な協力が成立しました。

この時代の集団の仲間は「食べ物は皆のもの」と思い、いつも公平な分配を期待していました。誰かがひとり占めするなどで公平な分配がされなかったときには、それを是正する行動がなされます。

例えば、しっかり熟して大きくなってから摘みとるはずの果実を、うっかり者が小さいうちに早くとって食べてしまったらどうでしょう。そういう違反行為は普通、集団の掟に従って糾弾されます。

しかし、掟の違反とまでは言えず、糾弾されない場合も考えられます。そのようなとき私たちは「うまくやったな」と、うっかり者に嫉妬するのです。

うっかり者も、向けられた嫉妬心に気づいて罪悪感を抱けば、食べ残した小さな果実を分け与えます。「うっかりしてました、これで許してください」となれば、一件落着です。つまり、嫉妬心は仲間うちの富の偏りを発見して、それを是正しようとする気持ちであり、結果的には、公平感と同様の働きをするのです。 

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