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「デマを信じ込んでしまった人」が聞く耳を持たなくなる“本能的な理由”



2020年07月30日 公開

石川幹人(明治大学教授)

デマを信じ込んでしまった人の考え方を返さえるのは難しい(石川幹人)

《誰かに嫉妬してしまう、何にも情熱が湧かない、すぐに後悔してしまう……よくある悩みは、実はその人が悪い訳ではありません。私たちが生き残りやすいように、先史時代から受け継いだ遺伝子に問題があったのです。本来は人類の生存に有利な反応だったのですが、現代では高度に社会が発達し遺伝情報がそのまま適応できない状況なのです。

『その悩み「9割が勘違い」 科学的に不安は消せる』(KADOKAWA)の著者であり、進化心理学の第一人者である石川幹人氏が、人間に共通した人間の進化の歴史から現代人が抱える悩みを読み解きます》

※本稿は石川幹人著『その悩み「9割が勘違い」 科学的に不安は消せる』(KADOKAWA刊)より一部抜粋・編集したものです

 

人間は「情報を信じる」ようにできている

【お悩み】友人から「○○食品会社で食中毒が起きたのに隠しているって、アルバイトの子から聞いたよ」などと知らされると、つい周りの人々に「大変、大変、実はね……」と、次々に話してしまいます。あとから根も葉もない噂話であったことがわかるのですが、その話を最初に聞いたときは、まったく疑いもしないのです。どうしてこんなことしてしまうのでしょうか?

【答え】人間は基本的に情報を信じ、情報源を忘れるように進化したからです。

私たち狩猟採集時代の環境に適応した遺伝情報を多く引き継いでいます。その時代が長期に渡って続いていたので、社会や文化が変わっても人の内情はそこまで追いついていません。

狩猟採集時代はだいたい100人程度の小集団で暮らしていたとされています。小集団では、情報は周囲の誰から聞いても大差ありませんでした。文字がない時代ですから、集団に有効な情報だけが整理され、語り継がれていたでしょう。

情報は基本「信じるべきもの」であり、誰から聞いたかという情報源は覚えなくていいものでした。そのほうが、集団を一体化させるのに便利なので、私たちの基本的な特徴として組み入れられたのです。

現代の私たちも、ともすると身近な人々の話を信じるようにできています。「振り込め詐欺」に遭い、自分の息子を名乗る人物の言うことを信じてしまうのも、それが原因です。

批判的思考を発揮し、デマや噂に惑わされないよう対策すべきです。デマや噂話をあとから振り返ると、「おかしな話だな」と思うことも多いものです。

だから、初めて耳にしたときに「ちょっと待てよ」と、理性的に内容を吟味すると疑うこともできます。真偽がはっきりしない間は拡散を控えるようにすれば、問題はかなり軽減できます。

 

正義感を刺激する構図がデマを拡散させる

しかし、デマの内容に一定の構図があると、「すぐに拡散しなければ」という義務感が高まり、理性的な吟味の機会が失われます。

その構図とは、「食中毒を隠す悪い会社」という敵がいて、もたもたしていると私たちが知らずにその会社の食品を食べて被害をこうむるという、協力集団の仲間とその外部との対立関係です。

デマの拡散は、こうした「皆のために」と思う正義感が災いしているのです。正義感は肯定的感情と見なされているため、反省が利きにくいことも問題を深めています。

情報過多の現代社会ではデマが到着するのも当然と、理性的に考えたうえで「もしデマだったら誰がどの程度困るのか」を推測しましょう。最近では、安易にデマを拡散した人が、業務妨害として罪に問われたり、多額の損害賠償を請求されたりしています。

冷静な行動が望まれます。かつて感染症が流行したとき、「アマビエという妖怪がそれを退散させる」という都市伝説が語られたようです。

感染症の流行のように、社会が危険にさらされ多くの人々が恐怖を感じる場合、それを鎮める物語がつくられます。もうおわかりのように、これは私たちが自らの本能をなだめ、冷静を保つための方策です。

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