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実は夢を見ているだけ? 科学者が解き明かす「金縛りの正体」

2020年10月28日 公開

石川幹人(明治大学教授)

 

金縛りの時に妖怪が見える生物学的理由

では、金縛り時に、なぜありもしない妖怪が見えるのだろうか。それにも生物学的な理由が知られている。手足が動かないときに敵におそわれると、命にかかわるので恐怖をいだく。

続いて、「その恐怖の源は何か」と合理的な思考を働かせる。その結果、恐怖の対象となる妖怪を無意識につくり出しているのだ。何せ夢の中だから、何でもつくり出せてしまう。

人間にとって恐怖は、危険のサインである。高いところも、巨大物の近くも、暗闇も、潜在的な危険がある。そうしたものに恐怖を感じて近づかない人のほうが生き残りやすい。

生きのびた人々の末裔である私たちも、基本的に恐怖を感じやすい動物だということが、進化生物学の知見からもいえる。

暗闇では本来、トラなどの夜行性の捕食動物、そしてなわばりを奪いに来た見知らぬ他人などが潜在的な危険の対象だ。暗闇で襲われたらひとたまりもないので、事前に闘うか逃げるかの準備をする必要がある。生きのびるためのその姿勢が、妖怪や幽霊を目撃しやすい心理状態に私たちを誘導している。壁のシミでも、草の揺らぎでも、敵らしきものには積極的に「恐ろしい」と反応するようになっているわけだ。

今日の文明社会では幸いなことに、そうした潜在的な危険は薄らいだ。もはや何も怖れる必要はない。それでも、恐怖の感情は昔のまま私たちの中に存続している。私たちはその恐怖を説明するために、あえて妖怪や幽霊を生み出したのだ。

暗闇に幽霊が見えたら、「本当の敵でなくてよかったな」と安心してもよいくらいなのだ。現実世界では、暗闇にひそむ本物の人間のほうがよっぽど怖い。

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