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「営業時間の短縮」で売り上げを伸ばしたロイヤルホストが、コロナショックで学んだこと



2020年11月04日 公開

菊地唯夫(ロイヤルホールディングス代表取締役会長),河合雅司(人口減少対策総合研究所理事長)

 

人件費はもはや「変動費」ではない

【河合】コロナ禍で需要が激減し、多くの企業が事業の再編に取り組んでいます。リスクヘッジのために新規事業の立ち上げや他業種への転換を図るケースも少なくありません。

御社はレストランのほかにも事業所内給食や機内食事業、ホテルなど多くの事業を手掛けておられますが、事業の多様化の動きをどのように見ておられますか。

【菊地】これまでの危機においては、グループ内でそれぞれの事業間で業績を補うことが可能でした。ロイヤルホストは2012年に前年超えを果たして以来、ずっと好調を維持してきました。

2011年は、団塊の世代が65歳に達し、年金が支給され始めたことで、年金のキャッシュフローが一気に増えた時期だったのです。そのために「ちょい高」などの消費傾向が生まれました。

百貨店業界も同じ時期に、15年ぶりに前年超えとなりました。しかし今回の危機は次元が異なり、前例のない苦境を迎えています。
(編集部注:10月27日、ロイヤルホールディングスは12月末時点で50歳以上64歳以下の社員を対象とした早期希望退職を実施する、と発表した)

【河合】私は「そもそも企業はコロナ前の売上水準に売り上げを戻す必要はない」と考えています。というよりも「戻してはいけない」と思います。

日本は今後、人口減少によって坂道を転げ落ちるように内需が減っていきますので、無理に元に戻したとしても、長続きはしません。むしろ規模を縮小させながら生産性を向上させて利益高を上げていくモデルを構築していくべきなのです。

【菊地】コロナショックでは本当に、さまざまなことを学びました。一つは、いくら事業ポートフォリオを分散してもリスク対策は万全ではなかった、ということ。

ロイヤルホストの売り上げが落ちても「天丼てんや」が補ってくれる、ということはなく、すべての事業がコロナに太刀打ちできませんでした。

もう一つは、「もはや人件費は変動費ではない」ということです。以前は、会社の業績に応じてアルバイトなど非正規の従業員の数を調整し、経費を調節してきましたが、コロナショックによって見えたことは、人件費が売り上げに左右されない固定費になっていたということです。

この変化は、人口減少によって働き手の確保が難しくなったことによって生じたものでしょう。欠員の補充が難しくなるわけですから、人材を確保するために、アルバイトをなるべく正社員として登用し、短時間勤務のスタッフはシフトを固定化した。そうなると人件費を下げることが困難になります。

ならば、今後外食企業はどのようなビジネスモデルをつくっていけばよいのか。河合先生のご指摘通り、人口減少社会に応じたモデルをつくることが求められています。

 

「終身雇用の崩壊」は囲い込みから始まる

【河合】経団連の中西宏明会長やトヨタ自動車の豊田章男社長も、「終身雇用の限界」を口にし始めていますね。私は、「年功制昇給」や「終身雇用」の崩壊は人材の囲い込みから始まると思っています。

人手不足が深刻化してくると、各企業とも若くて優秀な人材を囲い込もうとするでしょう。将来の幹部候補にしたい優秀な人材ならば、若くから高給を払ってでも確保したいという企業が登場します。

すでにソニーは2019年に初任給が最高で700万円台になる制度を導入し、対抗するかのようにNECも1000万超えを可能にする新制度を発表しました。

しかしながら、新卒の優秀な若者に高給を支払う雇用が一般的になったとしても、入社後の昇給はどうなるのかということです。人件費の原資は簡単には増やせません。初任給がいくら高くとも、その後が頭打ちになったのでは、優秀な人ほどライバル企業に引き抜かれてしまいます。

もし、有能な人の処遇をどんどん手厚くしようとすれば、全社員の給与を一律に上げる定期昇給はできなくなります。いずれにせよ、若い世代が減ると、終身雇用を前提とした「賃金上昇カーブ」というのは過去のものになっていくと思います。

そもそも、私は、優秀な人材を囲い込むという発想に無理があるのだと見ています。多くの人がどんどん転職し、転職を重ねても給与が落ちず、むしろキャリアアップしていくような社会にしていかないと、日本の生産性ははすます落ちていくのではないかと思います。

いま世間の目はコロナに向いていますが、日本の場合は絶対的な人手不足なのでアフターコロナとなれば転職市場も再び活性化するでしょう。すでに副業・兼業も広がりつつあります。

高齢者の就業も進み、もう、「生涯一つの会社に守ってもらえる」という時代ではないのです。雇用の流動化が進むことをにらんで、早期に労働法や社会保障制度の見直しに着手すべきです。個々人も働くことの価値観を根本的に変えていく必要があると思います。

【菊地】とくに重要なのは、価値観を変えることですね。日本人は転職や雇用の流動化をネガティブに捉えがちですが、個人が新しい価値を生み出し、新たな自分に出会うチャンスが生まれるのは事実です。

【河合】繰り返しますが、若い世代が激減していくのですから、企業は囲い込みよりも、「人材のシェアリング」をめざすべきなんです。複数の企業が連携して若い人材を出し合い、共同で一つのプロジェクトを進めることです。

そうした取り組みは今でも少しずつ見られるようになってきましたけれどね。そこで生まれた新たな知見を自社にフィードバックさせることで、企業も個人も成長します。

若者というのは無理に囲い込もうとすると、かえって外に飛び出そうとするものです。優秀な若者ほど「大きな世界」を知ろうとする意欲は高いわけですから、むしろ積極的に組織の外に出してあげることです。

【菊地】今回のコロナショックは、日本を変えるチャンスです。人口減少は目に見えない分、いままでのやり方でなんとか克服しようとぬるま湯ムードになりがちです。しかしコロナ禍により、従来のやり方では決定的な崩壊が目に見えています。

【河合】さらに見落としてはならないのは、日本人の年齢構成が劇的に変わっていくことです。現今在の65歳以上人口は約3600万人で総人口に占める割合は28.4%ですが、2040年代初頭には4000万人近くにまで増え、国民の3人に1人以上が高齢者となるのです。

当然、消費者の嗜好は変わりますし、1人あたりの消費量も減ります。外出する人の数も減るでしょう。「コロナ前」の売上水準に戻す意味がないというのは、総人口が減るだけでなく、こうしたマーケットの複合的な縮みが起こるという意味合いもあるのです。

【菊地】高齢化については、ロイヤルホストも試行錯誤を重ねています。以前、将来のマーケットを見据えて和食の御膳のメニューを揃えたことがありますが、人気商品にはなりませんでした。

ロイヤルホストは洋食が強みで、和食に慣れていなかったこともあります。本来の強みを見直しつつ、別のかたちで高齢者のお客様の掘り起こしにチャレンジしたい。

ファミリーばかりではなく、あらゆる層のお客様に喜んでいただけるレストランであり続けるように、時代の先を見た変革を続けたいと思います。

 



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