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「科学だけでは説明できないこと」を学ぶ意味とは?

2021年07月09日 公開

大賀康史(フライヤーCEO)

フライヤー 大賀康史

ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。
こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。

今回、紹介するのは『読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊』(堀内勉(著)、日経BP)。

この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。

 

世界中の知とつながる感覚が得られる一冊

読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊

なぜ人は本を読むのでしょうか。本全体だと領域が広過ぎるので具体的に考えてみます。例えば歴史が好きな人はたくさんいる印象があります。歴史の本を読んでいると世界の流れの中に、今の自分をつなげられるからかもしれません。

哲学は、日々の悩みや問いに対する指針を求めるような気持ちで向き合うことが多いように思います。宗教も同様の傾向があるでしょう。

政治、特に民主主義の源流に関する本については、世の中の仕組みを形作った創成期の人たちがどのような想いで構想したのかがうかがえます。科学からは現代の暮らしやすさを形作った様々な人の叡智を垣間見ることができます。

経済に関しては最も身近なテーマと言えるかもしれません。現代の生活に活かせる知見の宝庫となっています。

実際はこれらの領域の本を読む動機は人それぞれでしょう。およそすべての領域をカバーする本という媒体の偉大さは一言では言い表せません。一つ一つの領域ははるかに深く、自分はその水面上から覗き見るような心持ちで眺めています。それでも、私たちの知的好奇心をくすぐるのは、今の自分や過去知ったこととの何らかの接点があるからです。

この接点の大きさや数の多さが、好奇心の強さの源になり、新しい本に導いてくれるのではないか、と日々感じています。そのつながりを形作る知の体系に触れられるのが、本書『読書大全』だと言えます。

 

時代区分と学問領域の変遷

序章では、歴史の区分について語られます。古代は初期文明の成立から、476年の西ローマ帝国の崩壊までとされています。中世はその後、1453年の東ローマ帝国滅亡まで。近世はプロテスタントの誕生や、大航海時代を経て、1648年の三十年戦争を終結させたウェストファリア条約までを指します。

その後は、フランス革命により国民国家や市民社会の確立がなされ、第一次世界大戦までが近代とされます。それ以降が現代です。特に西洋の歴史をとらえるにあたって、この流れを意識することで輪郭がはっきりしてくるのではないでしょうか。

学問領域は歴史の変遷とともに、主役が変化してきています。元々は神話や宗教が人をまとめるために重要でした。その後、宗教間の争いが増えてきたため、哲学により万人が納得できるような共通の原理や考え方を模索するようになっていきます。

17世紀以降、ガリレオ・ガリレイやアイザック・ニュートンの功績により、数学を駆使した現象の解明を行う近代科学の時代になっていきます。そのころから哲学は世界の構造を明らかにするという役割が弱まり、その座を科学に譲っていきます。その代わりに人間の本質を探ることに焦点を絞るようになります。

そして人間社会の営みに関わる経済活動を考察する部分が、経済学として切り出されていきます。経済や科学の領域が誇大化して、宗教や哲学は大きな物語を提示する力を失ってきたといいます。社会の構造変化と思想の変化は相互に影響を与え合いながら今に至っています。

 

予測精度の高さが人を方向付ける

本書では、宗教、哲学、経済の変遷の流れが紹介されています。その後の構成は、「人類の歴史に残る200冊」として、名著の数々が紹介されるブックガイドとなっています。この200冊に触れる部分だけでも、大いに参考になります。

本書から少し離れて、時代によって支配的な思想やトレンドがなぜ移り変わるのか、ということも考えてみたいテーマです。少し先の未来をどれだけ正確に予測できるか、ということが時代を担う思想にとって重要だと感じています。

元々は宗教や神話が、世界の人々を導く役割を持っていました。占星術に近いものが、あたかも科学のように未来を見通すものとして扱われていました。

その頃は数学や科学の知見の蓄積が足りず、もっと粗く世の中を見る教えに人は魅せられていたのだと思います。例えそれが正しい結論を導かなかったとしても、その時点で何らかの結論を出す効用があるので、ときの支配者に重宝されたのでしょう。

目や耳で実感できるスケールの対象の未来予測方法として、力学を中核とした物理学は特に力を持ったものです。目に見えるものの動きは、様々な科学を駆使すればほぼ予想できます。

精緻に予測すれば、ロケットの軌道計算も行なえるようになります。多くの人はその確からしさを持つ科学に対して神性すらも感じていて、信頼が厚いようでもあります。

一方で、経済学やビジネスの世界は、そこまでの正確な予測ができません。創業間もないベンチャー企業の事業計画は、その通りに経過する会社の方がめずらしいくらいで、1年後の売上すらも予想することが困難です。程度の違いはあれ、成熟した会社でも概ね似たようなものです。

株式市場の個々の銘柄の値動きを正確に予想できる人も存在しません。そのため、経済学やビジネスの法則は科学ほどの信認を得られておらず、いまだ流動的な研究対象であるように見えます。

それでも世界は科学のみで説明がつくほどには、単純にできていません。まわりの人の行動が予想と少し違っているだけで、わずか1時間後の未来が変わってしまうほどに不確実なものです。

そのため、断片的だったとしても一定の規則性が見られる法則には力があって、私たちはビジネス書や自己啓発書に救われることも多く、有用な知の源は無限とも言えるほどに広がりがあります。

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著者紹介

フライヤー(flier)

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