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大学生も「つみたてNISA、iDeCo」を語る今…インデックス投信がここまで人気な理由

北村慶(証券アナリスト)

2021年08月31日 公開 2022年05月25日 更新

 

インデックスに勝てないアクティブ投資

その理由は、運用にかかるコスト・手数料を勘案すると、インデックス投資の方がアクティブ投資よりもパフォーマンス(運用成績)が良いからです。

「アクティブ投資」では、プロの運用者が他の運用者に勝ち、市場の平均利回り(インデックス)を上回る運用成績を目指して、積極的な運用を行ないます。

高給のアナリストやファンド・マネージャーがさまざまな分析を行い運用するわけですから、銘柄の調査・分析などのコストがかかり、当然に運用手数料は高くなります。

アクティブ投資が市場平均に追随するインデックス投資に勝つためには、「インデックスの利回り+手数料率」以上のリターンを、常に上げ続ける必要があります。

ところが、実際の運用成績を見てみると、アクティブ型投信の大半はインデックス(TOPIXや日経平均)を下回るリターンしか上げてられていない、という事実が浮かび上がります。

また、アメリカでも、約8割の株式投信のパフォーマンス(運用成績)がS&P500インデックス(米国の主要500銘柄の平均利回りを表す指標)を下回る、との報告もあります。

もちろん、インデックス型投資信託を上回る成績を上げるアクティブ型投資信託も存在しますが、10年、20年という長期間にわたって市場平均に勝ち続けることは至難の業です。

 

「長期・分散・積立」投資と相性のよいインデックス投資

こうしたことから、特に年金運用のような長期投資においては、インデックス型の運用に優位性があります。事実、私たち日本国民の厚生年金と国民年金の運用を行っているGPIFは、運用成績を検証するたびに、インデックス型の優位性を認め、その比率を高めてきています。

また、分配益や売却益が20年間非課税となる「つみたてNISA」の対象商品として、金融庁は個人が「長期・分散・積立」投資を行うのに適した投資信託192本を選定し公表していますが、その大部分の173本はインデックス型の投資信託です。

このように現在では、金融当局も含めて、個人の資産形成にはインデックス型投資信託が最適というコンセンサスができているのです。

 

世の中を動かした“草の根ブロガー”たち

実は、普通の市民の資産形成には、インデックス型投資信託が良いことは、アメリカでは当然のように知られていました。しかし10数年前の日本においては、投資本と言えば、デイトレに代表されるような少数の個別株の短期売買を勧めるものばかりでした。

こうした「短期・集中・単発」投資は、勝つ人と負ける人が同数となるゼロ・サム・ゲーム(総和がゼロ)でギャンブル性が強く、投資(インベストメント)ではなく、投機(スペキュレーション)に分類されるべきものです。

また投資信託も、利益をすぐに配分してしまう分配型(複利効果が失われる)や、流行に乗ったテーマ型と言われる商品、あるいは過度に仕組みが複雑な商品が中心でした。

その背景には、投資信託を提供する金融機関が手数料収入の獲得を過度に重視し、そうした商品の短期・回転売買を勧めてきたことがありました。

こうした日本の現状に飽き足らず、投資理論に基づく真っ当な投資を主に海外のインデックス型商品によって行っていた個人投資家たちは、15年ほど前から、インターネットで情報発信を始めました。

「投信ブロガー」と呼ばれるこうした人々は、自分たちの運用ポートフォリオやおすすめ商品について情報交換するだけでなく、投資信託の運営会社に手数料が安く分散投資可能なインデックス型投資信託の開発の働きかけも行ってきました。

そして、2010年からは『投信ブロガーが選ぶ!ファンドオブザイヤー』というイベントを毎年開催しています。こうした動きは、金融機関や金融庁を動かしました。

金融機関はこぞって、運用にかかる手数料が安く、分散投資ができる投資信託を発売し始めました。そして市井の個人投資家たちが手弁当で運営するイベントであるにもかかわらず、『投信ブロガーが選ぶ!ファンドオブザイヤー2016』には、監督官庁トップである森金融庁長官が激励のメッセージを寄せる、という“事件”も起こったのです。

こうした動きは、2018年1月、市民のコツコツ投資を税制面から支援する制度、「つみたてNISA」の実現につながりました。

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